俳句賞
「冬の象」 粥川青猿さん

「受賞の喜びとともに、これからますます気を引き締めなければという緊張感も感じています」と話す粥川青猿さん

「受賞の喜びとともに、これからますます気を引き締めなければという緊張感も感じています」と話す粥川青猿さん

自然と人の営み織り込む

 35年の俳句歴にして初の句集。「句集を出すなら納得のいく作品がそろってからと思っていました。やっと500句くらいになったのですが、出版を前に選んでみると、これもだめ、あれもだめと、380しか残りませんでした。でもとても満足しています」と納得の出来栄えとなった。

 十勝管内の中学校で国語教師を務めていた35年前、「樺の芽」俳句会に入ったのがきっかけ。「近隣の農家が集まって句会を開いていたのですが、昼間働いた後でも夜に集まってくる情熱に驚いた。雪の中、馬に乗って来る人もいました。そして俳句も上手。私も本気になりました」。青猿の名はその時、「青二才の生意気な猿」という意味を込めて付けた。

 以来、同管内の小中学校に勤務しながら、士幌町で過ごした貧しい少年時代、故郷の厳しい気候、炭鉱で命を落とした労働者など、十勝をはじめ道内の風土とそこに生きる人たちを織り込んで創作を続けた。

 「単なる自然ではなく、人の悩み、苦しみを表現したい。開拓でどんな人が生きてきて、自然と関わってきたのかをたどりたかった。炭鉱でも貧しい人々が踏みにじられてきた歴史があり、その上に今の北海道があることを忘れてはいけない」と思いを語る。

 句集の表題を含む句は、人間を象にたとえた比喩。「象は今はおりに捕らわれていても、いつの日か自由な草原に戻って空を見上げる日が来るという望みを込めた。見えないおりに囲まれているわれわれ人間も希望を忘れないでいきたい」

 2004年に帯広・光南小校長を最後に教員を退職、現在は生まれ故郷近くで自然に囲まれて暮らす。13年からは自らを育んだ「樺の芽」の主宰も務める。「受賞はとてもうれしい。一方でこれからますます気を引き締めなければならないとも感じています。『これが受賞者の句か』なんて言われないよう頑張りたい」と話している。

草原の空疑わず冬の象

装甲の海霧へつきだす馬の首

坑口(しき)へ向く地吹雪男の首を提げ

死者に盛る飯のてっぺんは吹雪

南瓜煮て母の話はいつも銭