NoMapsのパネルディスカッション。テーマは「人工知能をビジネスに結びつけるには」

 松原仁、山川宏両氏の基調講演に続き、「人工知能をビジネスに結びつけるには」をテーマにパネルディスカッションが開かれ、起業家や研究者が、北海道が秘めている起業や人工知能の可能性について意見交換しました。

 参加者は以下の通りです(敬称略)。モデレーター・松原仁(公立はこだて未来大教授)、パネラー・伊藤博之(クリプトン・フューチャー・メディア代表)、岡田陽介(ABEJA代表CEO)、川村秀憲(北海道大学教授)、山川宏(ドワンゴ人工知能研究所長)、米倉千貴(オルツ代表)

※参考リンク

公立はこだて未来大 教員プロフィール クリプトン・フューチャー・メディア 全脳アーキテクチャ・イニシアチブ 川村秀憲研究室

al+  abeja

■AIの可能性 北海道の可能性

伊藤 今回のシンポはNoMapsの一環で北海道、札幌から新しいことを始める、勉強や気付きの接点になることを目的に取り組んでいる。中でも人工知能(AI)は北海道に可能性があると思っている。AIが生活を変え、産業のベースになる可能性がある。見ているだけではなく、手を動かし入っていこうと。農業や観光分野にもAIの波が押し寄せてくる。それを、われわれ自身の手でつくろう、取り組もうと。AIの研究者は北海道にもたくさんいる。AIにはデータが必要。研究者がいてデータがある、それを結びつけることで可能性につながる。このシンポは、そんなことに気づいてチャレンジしていこうと企画した。興味本位でAIに関心を持っている者として、ここにいる。

米倉 会社名のオルツは、オルタナティブから。クラウド上に自分の分身をつくろうというサービスをしている。私は怠け者で以前、採用面接をやっていた時、どう人を判断するか、自分の中ではパターン、マニュアルがあるが、それが人事スタッフにはなかなか伝わらないことがストレスだった。そこで、社内のチャットに、僕への問い合わせに、僕のふりをして答えるボットを差し込んだ。するとスタッフが騙された。そうしたら怠け者の期待が膨らんで、ボットを作り込んだ。パーマンのコピーロボットがベスト。

 コミュニケーションAIというと、IBMのワトソンとの違いを聞かれるが、みんなに便利なのではなくユーザーに便利な点が違い。僕らはそれをP.A.Iと呼んでいる。カレンダー情報、位置情報などその人の環境情報と組み合わせると、自分にとって便利なものができる。僕自身のAIつくるということが根源にある。医療やエンターテインメント分野、キャラクターや芸能人のAI化などに取り組んでいて、目指しているのはアウトプットの速さ。

岡田 大学中退し起業したが失敗した。当時、技術は分かっていたけど、ビジネスが分からなかった。その後、東京で就職してシリコンバレーで調査員のようなことをしていた時、ちょうどディープ・ラーニング(DL)が爆発しそうな時期だった。DLでなにかできないか、東京に戻り2011年に起業していま4年目。起業したとは言え、売るものがないところからのスタートだった。DLで何を売ろうか考えていたが、DLにはもととなるデータが必要。ウェブから入ると最終的にはグーグルやフェースブックに持って行かれる。そこで、彼らが持っていないデータを集めることにした。小売流通、工場、製造業などセンサーでデータを解析し、そこでAIをどう活用するかということにフォーカスしている。DLでいったん学習すると運用コストが圧倒的に安くなり、数億円のコストが数百万円になる。私は名古屋出身なので、東京だけではなく日本、地方からグローバル化をどう目指していくか考えている。

■新しい技術で遊んでみること

川村 子どものころからプログラミングをしていた。コンピュータが好きというより、プログラムで思い描いたものを作れるということにのめり込んだ。いま、ニューラルネットワークを使い、面白いものをつくりたいと考えている。研究室で特徴的なのは、企業との共同研究、プロジェクトが多いこと。バルーン型のドローン・ロボットで、プロジェクションマッピングや演出空間の拡張に取り組んでいる。バルーンは風やヘリウムによって影響され、制御が難しい。そこで、機械学習をロボット制御に使っている。自動車にはブレーキなど状況に合わせて自動調整機能がある。それら複数の安全装置を組み合わせ、機械学習でシミュレーションをして、機能をブレンドすることもある。シミュレーション後、実車でもうまくいくということがわかっている。また、北ガスのコージェネ(熱電併給システム)で、いつお湯や電気を使うのか、寒冷地仕様に精度良く予測することに取り組んでいる。これでエネルギーを数%減らせることができた。

 リーマン・ショック後、北海道のIT産業は伸びなくなっている。中国のオフショアが進んでいることもある。ベトナムも安くて優秀な人材が増えている。二次受け三次受けが頭打ちで、なにか考えないとならない。しかし、起業は狙ってそう簡単にできるものではない。優秀な人が尖ったことをするのを期待するしかない。AIは大きなビジネスのコストカットにつながるが、北海道に大きなビジネスそうはない。付加価値のあるビジネスをつくる必要がある。

山川 人工知能関係の20代の人たちに成長してもらって、活躍してもらわないとならない。どういう風にキャリアを考えたらいいのか? 日本だとやっぱり大学で博士の人に育って欲しいのか? みなさんにお聞きしたい。

米倉 小5からプログラミングを始めた。触った理由は、親が分からないから触っても怒られなかったから。子供心にフロンティア精神が刺激され、のめり込んだ。僕のところで採用する基準は、遊べるかどうか、自分で遊んだことがあるかどうか。新しい技術で遊んでみることが大事。それが基礎としてあること、ビジネス化はその先。25歳で独立して、最初から上手くいった。なぜうまくやれたのかというと、どうしたら稼げるか、どうしたら稼げなくなるか、法則を見つけられたから。この法則をみつけるのは難しく、勉強するより起業デビューさせる環境を整えたい。

岡田 私の会社では、新卒採用を1年目からやっている。大学院を中退して来る学生もけっこういる。でも、こちらから大学院を辞めて来いとは言わない、後悔のない意思決定をしてくださいと。その後、全力で頑張ることで、その意思決定は間違いなかったと思えるようになる。川村先生の研究室からも中退した学生を採用した。リベラルアーツ、映画や音楽、社会、環境を知ることで、こういう社会をつくりたいと思えるようになる。そんな人材を輩出できるようになりたい。

川村 中退して岡田さんのところにいった学生には、そんな面白いことを見つけたなら、戻ってこなくてもいいよ、と言った。

 20年前のITブームで出てきた道具はノリとハサミレベルで、わりとすぐ使える、すぐ組み立てられる。いまのAIがちょっと違うのは、ノミとカンナみたいな高度なツールであること。誰でも使えるが、それで家を建てられるか、そういう人もいるけど、効率的に専門性を身につける必要がある。使い方を大学という自由なとこでトレーニングすること、数学や統計のバックグラウンドを身につけることも大事かなと思う。

伊藤 私は会社を起こして22年目で、前職は公務員で大学職員だった。第2世代の人工知能を研究する研究室にいた。いまニューラルネットとか20年ぶりに、そんな言葉を聞いて懐かしいなと思っている。ぼくは専門教育を受けない状態でこの世界に入ってチンプンカンプン。いまそういうムーブメントが来て、大学や研究者は幸せだと思う。一般のエンジニアはそういうところにいないので、大学の教育をいかに外に出すか、先進性を示す一つの指標になっている。

 AIのこともネットで学べてしまう。大学を補完する知識の獲得手段は、実はたくさんある。北海道は遠くで何もない、というのは言い訳として通用しない、学ぼうと思えばいくらでも学べる。知識獲得、能力発揮の場所としてAIセンターみたいなものをつくり、エンジニアに知識を獲得させる、周知することが必要かなと思う。

松原 学歴は関係ないと思う。私は学歴が素直すぎてコンプレックスがある。日本は素直な学歴が歓迎されるし、キャリアは一方通行だけど、日本でもようやく大学に戻って学び直すという雰囲気が出てきた。アメリカがすごいのは、大学と会社を行ったり戻ったりすることで、それがビジネスや学問を活性化している点。

■北海道にとってのAI

伊藤 北海道にとってAIをどう使えばいい?とお聞きしたい。

松原 北海道には現場を持っている強みがある。観光の現場にいないと観光のデータは入ってこないし、問題も分からない。少子高齢化、福祉の問題で日本は世界最先端の国、北海道は日本の中でも厳しい。それを逆手にとれば、人工知能研究の宝庫だと思う。東京の人はそんなデータにアクセスできない。ニッチな分野、農業・漁業や過疎地の交通問題もなんとかしないとならない。北海道を観光や自動運転の特区にすればいい。人がいないし、自動運転車が雪道を上手く運転できたらすごいこと。過酷な環境と最先端の技術がある。勉強会なんかは、東京だと無料の講座とかあるけど、北海道はそれが弱い。専門家から伝える努力は必要と思う。

川村 札幌の人口は200万弱で、ピークは過ぎて減っていく。インバウンド、農業や観光で、品質やサービスの質を落とさずどう手を抜いていくか、AIやIoTを使ってどう支えるか考えたい。フィールドとしては先端を走っているので、行政も巻き込んでやっていかないとならない。そういう機運は高まっていて、先進事例がつくれればと思う。

松原 帯広でIoA、インターネット・オブ・アニマルをやっている方がいる。牛にセンサーをつけデータを取る。牛はいつ発情するか知ることが大事で、昔から研究はあるそうだけど、歩行などデータ取ると正確に分かる。そんな発見がいくつもある。そういうのは北海道以外にはできない使い方。AIについても、人がやっていないことを切り開く方がいい。北海道には宝がたくさんある。

伊藤 帯広のケースは、農業のグーグル。帯広を拠点にハード、ソフトを開発する素敵なビジネスを展開している。それは東京の会社にはできない。特殊な事例だけど、北海道に昔からある産業にAIをくっつけて、フェース・トゥ・フェースで改善している。北海道は先端的なことを試みられる場所。行政は、北海道の会社がやっていることはたいしたことないと思っていて、実装実験しても「んー」という反応だったりする。よく分からないからやらない、ではなく、よく分からないからやる、ということが大事。夏の台風被害を確認するのにドローンが活躍したという話があった。災害に技術が役立ったことを実証できた。少子高齢化が進んでいて、ドローンが落ちても広いからいいじゃない。寛容性を大事に、新しい可能性あっていいねと。

松原 未来大で交通システムのベンチャーをつくったばかりです。これからこういうベンチャーを実社会にどう生かすか。北海道にはビジネスチャンスが多いと思う。