ナイトウミノワ著

評 菅原和博(映画館代表)

老境に魅力開花 ぜひ参考に

 「映画少年」はいつの間にか「映画老年」になっていた。題名・監督・俳優の名前の記憶には自信を持っていたが、最近これが出ない。同年代同士では「あれ」「それ」の連発で意味不明の会話が続く。

 そんな私に届いた1冊の本。表紙は英国の名優イアン・マッケラン。実に渋い。著者の肩書は「おじいちゃん評論家」とある。私も昨年還暦を迎えたが、この本はオレにはまだ早いんじゃない、と思いつつ読みはじめた。

 おじいちゃん俳優は最初からおじいちゃんだったわけではない。若い頃は目立たない俳優だったのだが、シワが増え、髪が抜け、体形が丸くなるに従い、魅力を開花させた。通常の逆パターンだ。その代表はアンソニー・ホプキンスだろう。地味なイギリスの舞台俳優かと思っていたら「羊たちの沈黙」の怪人レクター博士役で大化けした。

 登場する老優たちは私の憧れの俳優だ。ジャック・ニコルソン、マイケル・ケイン、ショーン・コネリー、ロバート・デ・ニーロ。今や巨匠監督のクリント・イーストウッド。「ディア・ハンター」の美青年クリストファー・ウォーケンも73歳か。読み進めていくとなぜか目がかすむ。老眼が進んでいるせいかと思ったら、かすんで見えたのは涙のせいだった。読みながら思い出があふれてくる。

 著者のおじいちゃん俳優愛は本物だ。細部へのこだわりが的確で、これから年を重ねていく上で参考になる。例えば、「おじいちゃん俳優」の条件。《1》還暦を迎えていること《2》老いに抵抗せず、受け入れていること《3》シャキっとしていること《4》性を感じさせすぎないこと。

 読み終えてから小学生の正月に祖父と父と私の3人で帯広のオリオン劇場へ映画を見に行ったことを思い出した。カーク・ダグラス主演「テレマークの要塞(ようさい)」。旧満州からの引き揚げ者だった祖父は戦争映画と西部劇が好きだった。少しカーク・ダグラスに似ていた。

 続編で日本俳優編もお願いしたい。

(立東舎 1728円)

<略歴>
1976年生まれ。ウェブデザイナーとして働きながら、すてきなおじいちゃん俳優を探す