<単行本>

◆恋するハンバーグ 山口恵以子著

 帝都ホテルで副料理長を務めた孝蔵が東京・佃で昼は食堂、夜はフランス料理という「はじめ食堂」を始めた。ホテルの味を格安で提供するとあって自信満々の孝蔵だが、開店後間もなく客足が遠のく。妻の一子は店員たちと原因を探るが-。東京五輪直後、昭和40年の下町を舞台に、孝蔵夫婦と客との心温まる交流を描く短編集。(角川春樹事務所 1512円)

◆ラヴィアンローズ 村山由佳著

 底なしにうたぐり深い夫。その夫を疑わず、自分の非を責め続けることしか知らない妻の前に現れたのは、自由の匂いを身にまとった九つも年下の男だった。官能に満ちた恋愛世界を描いて人気の直木賞作家が描く、新境地の恋愛サスペンス。年下の男に心奪われていくなか、1人の女として目覚め自立してゆく戸惑いと苦しみが、ひりひりと読者の胸に刺さる。(集英社 1620円)

◆日本×香港×台湾 若者はあきらめない SEALDs編

 安全保障関連法に反対する若者グループ「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」のメンバーが、香港の大規模抗議行動「雨傘運動」や台湾の「ひまわり学生運動」を主導した若者と、民主主義やアジアについて語り合う。新しい政治文化を創出しようとする若者たちの声は注目に値する。(太田出版 1296円)

◆去就 今野敏著

 警察庁からストーカー対策チームの編成を命じられた大森署の署長・竜崎。自宅に戻ると、娘の美紀から、別れを切り出した警察官・忠典にストーカーまがいの行為をされていると打ち明けられる。翌日出勤すると、大森署管内でストーカーが原因と思われる殺人事件が起きる。正義感あふれる竜崎を描く隠蔽(いんぺい)捜査シリーズ。(新潮社 1728円)

◆勝つ人 武井壮著

 十種競技で日本チャンピオンになった経歴を持つタレントが、陸上、ボクシング、柔道、相撲などの選手や指導者13人と対談。北島康介を育てた水泳コーチ平井伯昌は、15年前には「金メダル取るなんて寝ぼけてるのか」と言われたという。学生時代、体の「挟めるところ全部の」体温を1日6回測って競技に生かしたなど、随所に現れる著者のこだわりにも脱帽。(文芸春秋 1188円)

<文庫・新書>

◆呑(の)めば、都 マイク・モラスキー著

 「赤ちょうちんがなければ日本に住んでいなかったかも」と言うほど居酒屋を愛するアメリカ生まれの早稲田大教授による居酒屋回遊記。新宿ゴールデン街の常連に教わった競馬帰りの「おけら街道」、旧赤線地帯など、著者の並々ならぬこだわりを感じる。(ちくま文庫 972円)

◆30代記者たちが出会った戦争 共同通信社会部編

 共同通信の記者8人が太平洋戦争の激戦地を訪ね、元日本兵や被害者の話を聞いた連載「遠い戦地で」に大幅加筆。ミミズも食糧だったというガダルカナルでの飢えとの闘いや、死人の服まで奪ったシベリア抑留など惨禍を伝える。(岩波ジュニア新書 972円)

◆誰知らぬ殺意 夏樹静子著

 3月に亡くなった推理作家の短編傑作集。表題作は、恋人がいながら妻子ある男と関係する桐子が、恋人と温泉にいるアリバイを利用して男の殺害を計画する。「ベビー・ホテル」は遊ぶために預けていた子供がある日いなくなる。いずれも女性心理を描く7編。(光文社文庫 734円)

◆1%の力 鎌田實著

 わずかな希望で難病や末期がんを克服した実例を見聞してきた「がんばらない」シリーズの作家兼医師が、1%が秘めている偉大さを説く。一人一人の小さな積み重ねによる1%が戦争さえも回避できる力になり、個人や社会を幸せにするという。100%でないところがいい。(河出文庫 540円)

◆手塚治虫「日本文化」傑作選 手塚治虫著

 希代の漫画家が日本文化に着想を得た10作を選出。お岩が失明しそうな少年を助ける「四谷怪談」、佐渡おけさにまつわる「おけさのひょう六」、能に着想を得た「安達が原」など、今も色あせない手塚作品を再発見できる。(祥伝社新書 907円)