<単行本>

◆海賊船ハンター ロバート・カーソン著

 17世紀末、大西洋航路を往復するイギリス商船の誇り高き船長が、突然、海賊に転じて大海原を荒らし姿を消した。このカリブの海底に眠る伝説の海賊船を探すために人生をかけた2人の冒険家の執念を描いたノンフィクション。歴史の謎から浮かぶ大海賊の素顔と、夢に生きる現代の男たちの人生が交錯し、その面白さは極上の冒険小説のようだ。森夏樹訳。(青土社 3456円)

◆柳屋商店開店中 柳広司著

 「戌(いぬ)年にちなんだショートショートを」と依頼されて書いたシャーロック・ホームズのパロディー「バスカヴィルの犬(分家編)」、デビュー直後に1日で書いたがボツになった作品などを収録。「ジョーカー・ゲーム」などで知られる著者がエッセー集を出そうとしたが分量が足りず、短編も加えたというが、著者のサービス精神が遺憾なく発揮されている。(原書房 1728円)

◆生から死へ、死から生へ ベルンド・ハインリッチ著

 死んだ動植物が自然の中でどう処理され、最終的にどうなるかを、米動物学者が徹底的に観察した科学エッセー。ムースの死体にワタリガラス、コンドル、コヨーテたちが集まり次世代の命を生み出す様子から、その生命の循環の中に人間もいるべきではと問いかけてくる。桃木暁子訳。(化学同人 2484円)

◆不思議の国のトムキンス ジョージ・ガモフ著

 量子論の分野で業績を残した物理学者が1940年に出版した科学読み物を復刊。奇妙な世界に迷い込んだトムキンスの冒険を通じ、相対性理論を解説する。物体が運動方向に縮むローレンツ収縮という現象を「自転車をこぐ人が平たく見える」など極端な例で説明したり、宇宙の膨張を詩とイラストで表したり、難しい理論もユーモアを交え平易に語る。伏見康治訳。(白揚社 1620円)

◆動物言語の秘密 ジャニン・M・ベニュス著

 アメリカの生物学者兼サイエンスライターが、動物の生態から彼らの「ことば」を解き明かす。互いの鼻先を合わせて友好度を表すゾウや、首を打ち合って個体の優劣を決めるキリンなど、アフリカやアジアなど地域別に20種を選び、採食、睡眠、求愛、育児などを詳しく解説した観察編と、動物園の歴史や役割を追う入門編の2部構成。(西村書店 2376円)

<文庫・新書>

◆美の世界旅行 岡本太郎著

 芸術家・岡本太郎(1911~96年)が82年に出版した単行本を初文庫化。インドで遺跡を巡り、スペインではアルハンブラ宮殿、中南米でマチュピチュなどを見る。破天荒な性格が伝えられる著者のイメージとは異なり、描写は冷静で客観的。何より人々の交流の様子が魅力的だ。(新潮文庫 562円)

◆視(み)える女 ベリンダ・バウアー著

 英国人作家による長編推理小説。マーヴェル刑事は1年前の少女失踪事件を捜査中、息子ダニエルが行方不明になり自殺しようとしていた母親アナを助ける。二つの事件の接点に現れた霊能者を探るうちに、意外な事実にたどりつく。満園真木訳。(小学館文庫 896円)

◆小さな異邦人 連城三紀彦著

 推理作家の遺作短編集。表題作は、貧乏な母子家族に「子供を預かっている。3千万円用意しろ」という脅迫電話がかかるが、8人の子供は全員そろっていた-。「繭が枯れるまで」は、公園で出会った同級生から互いの夫を殺す交換殺人をもちかけられる。(文春文庫 896円)

◆デモクラシーは、仁義である 岡田憲治著

 政治学者が、デモクラシーの存在意義を考える。民主主義は官僚主義に陥りやすく、決定に時間がかかるなどの欠陥もあるが、自由に反論できる権利が平等に与えられており、出来の悪い制度ながらも弱者には最後のとりでだと説く。(角川新書 864円)

◆戦後80年はあるのか 一色清ほか著

 朝日新聞と集英社による連続講座を書籍化。出版の危機とはあくまで大規模出版の危機で、現実の市場より出版の規模が大きすぎると指摘する「本と新聞と大学は生き残れるか」のほか、集団的自衛権、少子化、財政赤字など戦後日本の現状を知識人たちが論じる。(集英社新書 842円)