<単行本>

◆風(かじ)かたか 三上智恵著

 沖縄の米軍基地問題のドキュメンタリーを撮り続ける映画監督による最新作「標的の島風かたか」の撮影記。辺野古の基地建設、高江のヘリパッド、石垣島・宮古島自衛隊配備の反対運動を最前線で撮影する著者は、強硬な政府の対応に怒り悲しむが、希望を失わない沖縄の人たちに励まされる。日本の民主主義が危機にさらされていることが伝わる。(大月書店 1620円)

◆幸せってなんだっけ? ヘレン・ラッセル著

 イギリス人の女性ジャーナリストが、夫の転職でロンドンからデンマークの片田舎にお引っ越し。そこで出会ったのは、世界一幸福だと自称するヒュッゲ(=心地よい時間を過ごす)な人々だった。所得税率は最高51.7%だが医療費も教育費も無料で労働時間も欧州一短い。そんな国でのドタバタ生活を楽しくつづる。鳴海深雪訳。(CCCメディアハウス 1998円)

◆血 新堂冬樹著

 「Web小説中公」連載のハード・サスペンスを単行本化。女子高生の本庄沙耶の両親が、家に侵入した男に殺害される。沙耶を引き取った祖父母は猛毒サソリに刺され死亡。次の引き取り先の叔父は自殺に見せかけて殺され、その息子も沙耶の同級生に刺殺される。少女の行く先々で起きる殺人事件を描く長編。(中央公論新社 1998円)

◆娘に語る人種差別 タハール・ベン・ジェルーン著

 仏在住のモロッコ人作家が、10歳の娘メリエムの疑問に答えて人種差別を考える。皮膚の色や文化が違う人たちとどう向き合えばいいのか。偏見は恐怖、無知、愚かさから生じ、根本的な解決法は子どもへの教育が大切と説く。10年ぶりの新版だが、難民問題に揺れる現在こそ響く言葉が多い。松葉祥一訳。(青土社 1512円)

◆写真記録 これが公害だ 林えいだい著

 1968年に自費出版された記録写真集の復刻版。著者が公務員時代に、地元北九州市で当事者として経験した大気汚染被害を記録。母親たちが自主調査をもとに企業や行政に改善を求めた「青空がほしい」運動の解説や資料を加えた。経済発展のため犠牲にされる環境や命の問題を問う姿勢には学ぶべきことが多い。(新評論 2160円)

<文庫・新書>

◆トレント最後の事件 E・C・ベントリー著

 1913年出版の推理小説に、他者の評にも言及した詳細な新しい解説を付した。米財界の大物マンダースンが殺害される。いったんは調査を始める探偵トレントだが、途中で事件から手を引く。恋愛小説の要素を盛り込み、今読んでも新鮮さのある古典的名作。大久保康雄訳。(創元推理文庫 1080円)

◆日本経済入門 野口悠紀雄著

 円安の影響やマイナス金利の成否など日本経済の課題と展望をまとめる。近年の低迷は、中国の工業化など世界経済の変化と急速な高齢化への対応の遅れが原因と指摘。外国人労働者の受け入れとITなど新たな産業の成長が日本の経済維持に必須という。(講談社現代新書 864円)

◆絶叫 葉真中顕(はまなかあき)著

 マンションで孤独死した女性の半生を読み解くミステリー。彼女が壮絶な状況に追い込まれる様子を、女性刑事の視点をからめて描き出す。社会保障制度の穴、弱者を食い物にするブラック企業など現代日本の抱える闇も浮き上がらせる。(光文社文庫 994円)

◆路線バスの謎 風来堂編

 路線バスは2014年時点で2171の事業所が運行している。徳島県三好市のアーケード街を走る四国交通。11月3日に限定片道1便だけの箱根登山バス。「荒木さん宅前」など個人名がバス停に多い網走観光交通の「網走―東藻琴線」など、乗り合いバスの不思議を解説する。(イースト新書Q 950円)

◆すべてはあの謎にむかって 川上未映子著

 芥川賞作家の2冊のエッセー集をまとめて文庫化。一夜漬けで丸字を直した幼時の思い出や東日本大震災の衝撃などを語る。震災で、作家に必要なのは過酷な現実を直視した上で読者に寄り添うフィクションを作る姿勢だと感じたという。(新潮文庫 594円)