文月悠光大城戸剛撮影

文月悠光
大城戸剛撮影

ポプラ社 1512円

ポプラ社 1512円

あふれる言葉 「表現の勝負」

 高校時代は女子グループになじめなかった。ライブハウスでのイベントでは「最近セックスしてる?」と男性客からぶしつけに問われる。疎外感や怒り、そんな言葉で表現しきれない心の動きを初のエッセー集につづった。

 札幌生まれの詩人。札幌旭丘高校在学中に最初の詩集「適切な世界の適切ならざる私」(思潮社)を出版し、優れた現代詩の詩集に贈られる中原中也賞を受賞した。容姿がかわいらしいこともあり「たくさん恋愛していい詩を書いて」と、余計なひと言を投げかけられることもあったそう。「自分に自信がなかったから真に受けたこともありましたが、いまなら冗談と思えます」

 早大進学で上京したが、集団に交じるのは苦手そうに見える。だからこそ外側から冷静に物事を見つめる視点が面白い。駅でジュースを売るアルバイトでは、店員を「キャスト」と呼ぶ店長に笑顔を引きつらせる。交際が破綻した直後に乗った山手線で涙を流した自分には「とうとう『電車の中で泣く女の子』になった」とかすかな興奮を覚えた。

 「詩は短いからこそ、表現の勝負ができる」と、10歳のころから詩を書いている。毎日、音楽を聴きながら思いついたことを小さなノートに書く。それを創作する時に見直し、キーワードを拾い、設計図のようにプロットを作り、推敲(すいこう)を重ねてイメージに近づける。「『詩はインスピレーションで書くもの』と思っている人がいますが、1行目からばっと書けるのはごくまれです」

 詩に絡む活動の幅も広げている。ちょっとしたアイドル活動をしてみたり、タイツブランドとコラボレーションして詩を書いた原稿用紙をタイツにしたりした。

 詩を音楽や演劇のように親しんでもらおうと、朗読も積極的に行っている。最初の詩集がフィンランド語に翻訳されたので、今年6月には現地で「まつげの湿地」を朗読した。インターネットの動画で見ることができるが、右手の甲にリアルな目をペイントしたパフォーマンスが斬新で、観客の心を揺すぶった。

 「その日に感じたこと、聞いたことを書き残したい。自分の中の器があふれるようで、書いて排出しないと苦しいから」と、小学生のころから日記も書き続ける。いま25歳。「自分の人生がどうなるか分からないけど、特性を生かせる場所を見つけたい」と話す。

 今月下旬には3冊目の詩集を出版する。「他者との出会いのなかで一番強烈なのが恋愛」といい、恋愛をテーマにした作品集になる。東京都在住。

東京報道 上田貴子