上間陽子大城戸剛撮影

上間陽子
大城戸剛撮影

太田出版 1836円

太田出版 1836円

過酷な人生 誰かの助けで変わる

 琉球大教授で教育学者の著者は自らを“調査屋”と呼ぶ。本書は、沖縄の風俗業界で働く若い女性に4年かけて聞き取り調査した。そこで浮き彫りになったのは過酷な生い立ちだった。集団レイプ。15歳での望まぬ出産。夫からのひどい暴力…。「それでも彼女たちは『助けて』って、めったに言わない」。子供のころから頼れる大人がおらず、何でも自力で解決してしまおうとするのだ。

 その一人、春菜は家庭環境の悪さから15歳で家出した。売春で生活費を得たが、時折涙が止まらない発作が出る。しかし「仕事」を辞めることはなかった。男も自分をあてにする。そんな生活を4年続けた。

 「沖縄は暴力の程度がひどい」という。女の腹を蹴って内臓破裂させたり、顔の骨を折ったりと、加減がない。著者が「リスク層」と呼ぶ貧困層には特に暴力が渦巻く。他者を殴れば社会的な信用を失うと考えたり、周囲が止めるなど「暴力を制御する装置」が少ないからだ。

 一方、育児放棄されたり、暴力を受けても自分で始末をつけてきた女性たちは「他人に対して不寛容」という。彼女たちは身を売ってでも自分で生活費を稼ぎ、自立する。周りの人に問題が起きても「自己責任」と片づけがちだ。その行動を著者は「社会全体でみると、正義の度合いがものすごく下がる」と危惧する。

 そうした中、一筋の光が差し込むような話が紹介されている。

 鈴乃は高校時代に妊娠したが、恋人から首を絞められるなどの暴行を受けていた。早産した子は重い脳性まひになった。しかし、恋人と別れた後、彼女は少しずつ人生を好転させる。キャバクラで働くかたわら高校で学び直し、看護師になった。その過程には、子供が入院していた病院の看護師の親切や、手弁当で勉強を教えた教師たちの応援があった。「彼女には『誰かが助けてくれるかも』という考えが生まれた。だから、看護師になりたいという希望を口にすることができたのです」

 著者は米軍基地に囲まれた沖縄の街で育った。中学時代には非行に走る同級生が身近にいた。そのころから少女がどうやって大人になるのか関心を持ち、ギャルや援助交際する少女たちから話を聞いてきた。

 調査の過程で信頼関係を築き、事件を起こした女性の自首に付き添い、出産にも立ち会った。「おせっかいだから」と笑うが、誰かが手を差し伸べることで崖っぷちの女性たちの運命は変わる。それがわかっているから、仲間を増やすためにこの本を書いた。

(東京報道 上田貴子)