広大な放牧地でゆったりと草をはむ牛たち。遠くからでも、その黒と白の斑紋からホルスタイン牛とすぐ分かりますね。馬も青毛(黒色)、鹿毛(褐色)、芦毛(あしげ)(白色)など、多様な毛色によって個体の識別ができます。

 一方、クマ、キツネ、シカなど野生動物の毛色は、その種類によってほぼ一定しており、外観から個体を識別することは困難です。ペットでも、イヌやネコの多様な毛色は彼らの祖先であるオオカミやリビアヤマネコには見られなかったものです。

 このように家畜化された動物たちの多種多様な毛色は、人によってさまざまな交配を繰り返して種を作ってきた歴史を物語っています。ホルスタイン牛の黒白模様は、ホルスタイン種の証しで、体色がほとんど真っ黒でも、必ず下腹部や尻尾の先、蹄(てい)冠部(脚の先端)に白色部があります。時々、赤色(褐色)が混じったホルスタイン牛がいますが、これは品種改良の過程で、赤毛のショートホーン種を交配した名残です。

 哺乳類の毛色は基本的に黒褐色と橙赤(とうせき)色の2種のメラニン色素で表現されるので、黒、白、褐色程度しか色のバリエーションはありません。しかし、魚類などはメラニン色素の他にも数多くの色素細胞を持つので、熱帯魚に見られるような驚くほどカラフルな色彩を誇っています。(獣医学博士 石川濶)