「私のがん体験を広く伝えたい」。語り手ボランティアを目指し、がんについて学ぶ三好ケイ子さん=札幌市白石区の道がんサポートセンター「ラ・プラス」(玉田順一撮影)

 がんは1981年から国民の死因の第1位を占め続ける。その日本で、北海道のがん死亡率はひときわ高い。喫煙率の高さ、検診受診率の低さなどが原因と指摘されるのに、適切な対策が取られないまま多くの命が失われている。がんで亡くなる道民は年間1万8千人。それを1人でも減らすには、どうすればいいのか考えたい。

 「夫のがんは手術後も次々と転移しました。やがて抗がん剤も効かなくなり、体が弱っていくばかりで。私もつらかったです」

 札幌市清田区の無職三好ケイ子さん(70)は、背筋をすっと伸ばし、3年前に胃がんで亡くなった夫のことを静かに語り始めた。

■体験を伝えて

 30年前には母を胆のうがんで失った。兄3人と弟もがんになり、3番目の兄が亡くなった。そして夫の死の2週間後、三好さん自身にも膵臓(すいぞう)がんが見つかった。手術後、70回余りの抗がん剤治療を重ねている。

 三好さんは最近、がんの体験を語り伝えるボランティアになろうと勉強を始めた。「がんは誰もがかかる。どんな人にとっても人ごとではない」との思いが募ったからだ。

 親、兄弟、夫、そして自らもがんにかかった三好さん。2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死んでいる今、こうした例は決して珍しくはない。

 だが、三好さんや私たちの住む北海道には、特殊な事情がある―。

 がん死亡率は、年齢構成がどの地域も同じになるように調整した上で、人口10万人中、がんで何人亡くなったかを算出して比べる。

 2013年の全国平均は80・1で、北海道は88・5。都道府県別では青森(99・6)に次いで高く、最も低い長野(66・1)とは大差がある=表=。長野では年間、10万人当たり66・1人ががんで命を落とすが、北海道ではそれより22人も多い計算だ。

■順位年々悪化

 実は、都道府県別死亡率の発表が始まった95年当時、北海道は13位で、今より状況は悪くなかった。ところがその順位は年々悪くなり、ついに12年から2位となった。

 部位別にみても、肺、乳房、膵臓、大腸など、大半のがんの死亡率が全国平均を上回っている。

 これは一体なぜなのか。どうしたらいいのか。

 「ものすごい危機感を抱いている。一刻も早く何とかしなくてはいけない」

 道医師会と道対がん協会の双方で会長を務める長瀬清さん(76)は、札幌・大通公園に面した医師会長室で表情をくもらせた。

 北海道には他都府県と同様がん死亡率を減らすための対策があるが、原因とみられる喫煙率の高さや、検診の受診率の低さなど、状況はなかなか改善しない。

 長瀬さんは「北海道で暮らす一人一人に、がんにならない、がんで死なないための行動を取ってもらいたい。がんは防ぐ方法があるのだから」と話す。

 自らの命を守るために、かけがえのない家族を失わないために、今、すべきことがある。(生活部の編集委員・岩本進と桜井則彦が担当し、5回連載します)