▽コーヒーが肝がんのリスクを「ほぼ確実に下げる」仕組みは、まだはっきりと分かっていません。緑茶が胃がんのリスクを下げる可能性があるのは、女性だけです。▽保存肉はハムやソーセージ、ベーコンなどの加工肉。赤肉はいわゆる赤身の意味ではなく、牛や豚、羊などの肉を指し、鶏肉は含まれません。国際機関は赤肉をとる量が週に500グラム(調理後の重さ)を超えないよう勧めています。▽魚由来の不飽和脂肪酸には、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)などが含まれます。▽BMIは体格指数と呼ばれ、日本肥満学会の基準では、一般値(普通体重)は18・5以上、25未満の範囲です。がん予防の観点で適正と考えられている数値は、「適正体重を維持する」の図に載せています。

津金昌一郎さん

 「がんを防ごう」キャンペーンの第3部は「食卓から変える」です。がんになる大きな要因の一つは、食を含めた生活習慣にあります。確実にがんを防ぐ“夢の食品”はまだ見つかっていませんが、どんな食べ物が発症に関わるのか、日々の暮らしで何をすれば予防につながるのかを明らかにします。

■「確実」はゼロ

 私たちの周りには「この食べ物にがんを防ぐ効果がある」といった情報があふれています。どこどこの機関、大学の研究による―とうたうものもあります。

 ところが、国立がん研究センター(東京)を中心とする専門家でつくる「がん予防研究班」によると、日本人のがんのリスクを「確実」に下げる食品や栄養素は今のところありません。

 「ほぼ確実」に下げると評価される飲食物も、わずか三つです。野菜と果物が食道がんのリスクを、コーヒーが肝がんのリスクをそれぞれほぼ確実に下げる=表=。これだけです。どの野菜や果物がいいかは示されていません。

 数ある情報との差は、いったい何なのでしょうか?

 がんの原因と予防法を研究する第一人者、国立がん研究センターの津金昌一郎(つがねしょういちろう)がん予防・検診研究センター長(59)=北大大学院客員教授=に尋ねると、「一つ一つの研究をすべて真に受けたら、がんを防ぐ食品や栄養素がたくさんあることになりますね」と冷静に語り始めました。

 津金さんによると、一つの研究だけでは、本当にがんを防げるかどうかは分からない。対象者や場所、時期が変われば逆の結果になるかもしれません。「あまたある情報には根拠がないか、根拠が質、量ともに不足したものが多い。基本的に、何かを売ろうとする人が発信する情報は、売る人に都合がいいと考えてみた方がいいでしょう」

 例えば「○○がんになるリスクを、××がほぼ確実に下げる」と言うためには本来、何万人もの人を何年間も追いかけて調べるような研究がいくつもあり、結果が一致しているという高い信頼性が欠かせません。

 さらに、動物実験で同じような結果になったり、なぜそうなるかのメカニズムを生物学的に説明できれば、それが科学的な根拠になるのです。

 日本人を対象に行った研究論文を何百本も集め、検証を積み重ねて研究班が判定したのが、掲載した一覧表です。繰り返しますが、一つの食品で日本人ががんになるリスクを「確実」に下げるものは今のところありません。健康食品やサプリメントも同様です。

 これまでの研究によれば、サプリメントの取りすぎは問題になることがあります。例えばベータカロテンやビタミンEを取りすぎると、がんや健康障害のリスクをむしろ上げるという証拠がそろっています。

■楽しくも大事

 日本人の今の食事について、津金さんは「昔に比べ魚を食べる量は減っていますが、まだ肉より多い。野菜も食べています。健康的でバランスがいい。唯一の欠点が食塩の多さ。だから食塩は最小限に、野菜・果物不足の人はもう少し食べましょう」と勧めます。

 その上で、がんを防ぐための暮らし方、とくに食について「リスクが明らかな生活習慣をできるだけ改めるように心掛ける。そして、根拠のない情報には振り回されず、おいしく楽しく過ごすことも大切ではないでしょうか」と語っています。(生活部編集委員・岩本進と桜井則彦が担当し、5回連載します)