北斗晶さん

 「私は今、病院のベッドにいます。乳がんです。右の乳房を全て摘出しなければならなくなりました」

 元女子プロレスラーでタレントの北斗晶さん(48)が昨年9月、ブログで自らのがんを公表し、大きな反響を呼びました。直後には乳がん検診を受ける人が道内でも増えたほどです。

 ただ、気になることがあります。北斗さんは毎年1回、乳房エックス線検査(マンモグラフィー)を受けていました。国の推奨は2年に1回。それを上回る頻度だったのに、胸に痛みを感じて病院を受診すると、2センチ大の乳がんがあったそうです。前回の検査から1年足らずでした。

 この話を聞き、「検診を受けても意味がないのでは」と感じる人もいるでしょう。確かに今の診断技術では、全てのがんを見つけるのは不可能です。短期間で急成長するがんもあります。

 また、国が勧める五つの検診=表=の受診者は健康な人が大半で、千人のうちがんが発見されるのは1~3人ほどです。がんではない人が多く受けるため、心身への負担が少ない、より安全な方法にする必要があるのです。がんを見つける能力だけをいたずらに上げられないといいます。

 とはいえ、これら五つの検診で、がんで死ぬリスク(危険性)を大きく下げられます。検診を受けた人は受けなかった人に比べ、子宮頸(けい)がんで78%、大腸がんでは60%もがんで亡くなるリスクが減ります。最も減少幅が小さい乳がんでも、リスクが19%減ると科学的に実証されています。

 北海道対がん協会(札幌)で年間4万人のマンモグラフィー画像を診る外科部長の池田由加利(ゆかとし)さん(52)は「残念ながら検診で見つからない乳がんが2~3割ある」と語ります。逆に言えば、7~8割は発見できるのです。「検診で異常がなければ絶対にがんがないと考えるのは禁物ですが、検診をきちんと受けることが大切」と強調します。

 検診受診者にとって最大の関心事は、自分の命と健康です。検診で発見できないがんに、どう備えるべきなのでしょうか。

 北斗さんのブログに、そのヒントがありました。がん検診を受けるよう訴えると同時に、「自分の体の小さな異変を見逃さないで」と記しています。うつぶせになった時に胸がチクッとした、鏡で見た乳頭の位置がいつもと違って見えたなど、自らの体験も細かく紹介しています。

 乳がんの患者会「あけぼの会」北海道支部長の関川正美さん(65)は「北斗さんは、がんへの意識を高く持っていたから、途中でがんを発見できたのでしょう」と受け止めています。

 まずは確実に検診を受け、異常があれば精密検査を受ける。同時に検診には限界があると知り、体の変化に注意を払う。違和感があれば病院に行く―。

 自分自身をがんから守るには、こうした意識と行動が大切なのです。

 がんで亡くなる道民を減らそうと、北海道新聞が昨年5月から紙面を中心に展開する「がんを防ごう」キャンペーン。第5部は、がん検診の現状と課題を探り、道民や読者の皆さんに検診を受けようと訴えます。

(生活部の編集委員・岩本進と桜井則彦が担当し、5回連載します)