さいとう・よしこ 1938年札幌市生まれ。主婦。2003年から現職。北海道健康をまもる地域団体連合会会長、全国結核予防婦人団体連絡協議会副会長も務める。北区健康をまもるつどいは、05年に日本対がん協会大賞を受賞した。

 今の日本はデータ上、「2人に1人ががんになり、3人に1人ががんで死ぬ」社会です。実際に予防に踏み出すきっかけになったのは、家族や知人の勧めという人が少なくありません。

■地域住民自ら学ぶ場を

 がん予防に関心を持ってもらうには、身近にいる人同士で分かりやすく、適切な時期を見はからい、何度も呼び掛ける必要があると感じています。

 札幌市北区にある10地区の連合町内会の女性部役員が中心となり、「北区健康をまもるつどい」を組織しています。死亡率が高いがんには特に注目し、予防啓発や検診受診の呼び掛けを続けてきました。

 2年前からは年に5、6回、出前教室「あなたに役立つがんのお話」を町内会館などで開いています。がんを学ぶ場を設けたいと願っていたところ、北海道対がん協会のお声掛けもあって実現しました。講師は対がん協会の医師や保健師、検査技師の方々です。

 参加者は十数人、多くても40人ほど。顔見知り同士なので、疑問点があれば質問もしやすいです。乳がんや子宮がん、高齢者のがんなど各回のテーマは町内会から希望を挙げて決めています。自発的に運営した方が参加者の関心が高まるからですが、教室が終わった後に「次回のテーマは、これにしよう」といった感じで、ざっくばらんに決めることもあります。

 医療講演会の多くは街中で大規模に行われます。でも自宅近くで何度も開かれれば、会場までの交通費がかからず、子育てや介護に忙しい人も参加できます。拠点病院や保健センターが開催に協力したり、がん経験者からも話を聞く機会を設けたりすれば、どんな地域でも開けるはずです。

 がん検診を受けてもらうため、独自で工夫している町内会もあります。

 回覧板につける検診案内文の原本は、市の保健センターなどから届く予定表だと思います。しかし小さな文字で情報が詰め込まれていると、住民の関心は引きません。このため、北区の篠路連合町内会は案内文を独自に作り直します。大きく太い字で、日時や料金、検診対象の部位を分かりやすく書いています。

 案内するタイミングも大事です。検診案内の原本が届く年度初めの4月に回覧をしても、実際の検診日までの間に忘れてしまうかもしれません。篠路連合町内会は検診の1カ月前に、回覧に加え、検診受診を呼び掛けるちらしも別に作って戸別配布しています。「町内会未加入者も受診できます」と記しています。

 同じく北区にある新川地区の町内会は、資源回収の益金をがん検診の受診料補助に充て、無料で受けられるようにしています。

 時々ふと思い出す場面があります。ある知人に「日本人の2人に1人は一生のうちに一度はがんになるって言うけど、私はがんになる1人じゃない。大丈夫よ」と言われたのです。

 でも、根拠など何もありません。こういう人は意外に多いのではないでしょうか。がんを早く見つけ、適切に治すという考えに変える必要があります。

 「がんは決して人ごとではない。誰でもがかかりうる」ことを地域の住民同士が根気強く伝えていく必要があります。町内会などの組織の役割も大きいと思っています。(聞き手・桜井則彦)

 北海道の高いがん死亡率を下げるため、私たちは何ができるのでしょうか。北海道新聞「がんを防ごう」取材班は、1年余りの取材を踏まえ、ポイントを「五つの提言」にまとめました。第7部は提言を一つずつ掲載するとともに、がんの経験者や予防に取り組む市民、医療者らに思いを語ってもらいます。(5回連載します)