道教委が開いた研修会。これから本格化するがん教育について、学校の先生たちが真剣な表情で議論した=2月9日

 「がんは知らないこと、難しいことばかり。教える前に私が学ばなくては」「新年度間近の今、新たにがんの授業を組むのは忙しくて大変だ」「4月からがん教育が始まるとは初耳。何でもいいから資料はないか」

 2月9日、札幌で道教委が教職員らを対象に開いた「がん教育」の研修会で、聞こえてきた先生たちの生の声です。全道から61人が参加しました。

■命考える教材に

 こうした声からは、これから子どもたちにがんを教える先生の不安や戸惑いがうかがえます。がん教育の必要性がまだ浸透していない実態もわかります。

 でも、研修会の最後に、保健教育が専門で道教育大札幌校の渡部基(わたなべもとい)教授(52)が「がん教育は何も特別なことを始めるのではない」と強調し、次のように勇気づけました。

 「学校で命の大切さを教える場面がたくさんありますね。そこに、がんを採り入れることで、子どもや授業や学校がパワーアップできればいい。今、みなさんが教えている教科に、がんという教材を入れたら何ができるか、考えてみてください。学校でのがん教育は、がんそのものを教えるというより、がんをよい教材として、教育目標を達成するものです」

 文部科学省は4月から、学校でのがん教育を「全国展開」することにしています。2012年に国が作った「がん対策推進基本計画」で、本年度までにがん教育をどう行うか検討し、学校で始めることを目標としていました。

 文科省は14年度から有識者による検討会を設置。がん教育の目的や教える内容をまとめた報告書を作成し、授業で使う教材や専門医など外部講師の活用指針も作りました。

 さらに3年間、全国でモデル事業を行い、延べ293の推進校が、がんの授業や教職員の研修などに取り組みました。

 全国展開について、文科省は「がん教育に積極的な地域もあれば、これからの地域もある。教材や報告書などを参考に17年度から、実施可能な学校から取り組んでいただきたい」(西尾佐枝子健康教育・食育課保健指導係長)と話します。

 冒頭の道教委の研修会も、この文科省のモデル事業の一環です。連載1回目(7日朝刊1、2面)で紹介した道の出前講座とは別に、道教委はこのモデル事業を活用し、14年度に中高2校、15年度中高2校、16年度小中高4校の推進校で、がん教育を展開しました。

■専門医の講演も

 その一つが、札幌市南区の簾舞中です。15年度から2年間、3年生の保健体育で教員による2時間ずつのがんの授業、がん専門医による全校講演会、教職員全員の校内研修会を行いました。

 「1年目は手探り。教職員にがんやがん教育の知識がなく、研修会で一から教わりました。でも、2年目は全教職員でがん教育の狙いを共有できました」と山下豊教頭(56)は振り返ります。

 「多くの先生はがん教育がどんなものか、まだよく分からないのが現状です」と話すのは、文科省の検討会委員で、旭川東栄高(旭川市)の野口直美養護教諭(53)です。今後、がん教育が広がっていくためのカギを、二つ挙げました。

 一つは、がん教育の意義を先生たちにもっと広げること。「取り組みを分析し、子どもにこんな効果があったと分かれば教員は納得して動く」と指摘します。

 もう一つは、先生たちが抱いている不安をなくすこと。「安心して教えるには、もっと使いやすい教材や入手しやすい情報などが必要です」と説きました。