末永く快適な生活を送るためには視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感と自由に動ける体が必要です。聴覚と平衡感覚を保つために大事な耳ですが、意外に知られていないこともたくさんあります。これからしばらくの間、健康な耳を保つコツをお話しします。

 まずは、誤解が多い耳掃除の方法について説明します。「風呂上がりに綿棒で掃除をするのが習慣になっている」という話をよく聞きますが、実は湿った耳穴を入念にこするのは一番してはいけない方法です。

 「耳あか」と聞くと、とても汚いもののような印象を受けますが、外耳道の皮膚の抗菌、防水の働きがあります。英語で「イヤー・ワックス」とも呼ばれます。床や車の表面を保護するためにワックスを塗るように、菌や汚れから守るために無くてはならないものなのです。全部こすり取るとかえって外耳炎などの原因になることがあります。

 耳あかは、乾燥した状態でやさしくかき出すのが理想です。昔から使われている竹の耳かきなど専用の道具を使ってください。頻度は1、2カ月に1回程度で十分です。耳の奥の耳あかは少しずつ外側に移動してきますので無理に取る必要はありません。

 耳あかには「ベタ耳」と言われる湿性耳垢(じこう)と「カサカサ耳」と言われる乾性耳垢の2種類ありますが、日本人の約8割は乾性であると言われています。ですから「耳あかがベタベタして、すぐ詰まってしまう」という人もいますが、風呂上がりに耳掃除をしたために耳あかが湿っていて誤解している可能性もあります。

 たけいち・のりひと 北大病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師。日本耳鼻咽喉科学会認定専門医。北大医学部卒。札幌市出身。44歳。