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カニ流通へ見えぬ影響 <極東 水産資源争奪戦> 

 極東水域の豊かな水産資源をめぐり、日本、ロシア、韓国、中国など周辺各国による争奪戦が始まっている。その余波は水産王国・北海道に及ぶ。極東第3部はその現状を報告、初回はカニの密漁をめぐる攻防から始めたい。韓国もロシアからカニを輸入している。2009年12月、ロシアと違法操業防止協定を締結した。水産都市・釜山(プサン...

韓国・釜山市のチャガルチ市場で販売されているロシア産の活タラバガニ=3月19日(岩崎勝撮影)

 極東水域の豊かな水産資源をめぐり、日本、ロシア、韓国、中国など周辺各国による争奪戦が始まっている。その余波は水産王国・北海道に及ぶ。極東第3部はその現状を報告、初回はカニの密漁をめぐる攻防から始めたい。

 3月上旬の紋別市。海明けしたばかりの青いオホーツク海を見渡す事務所で、ロシア産の活ズワイガニを扱う水産加工会社「海商(かいしょう)水産」会長の笹渕一郎(79)は不安を口にした。

 「資源維持のためにも、正常化はいいことだ。しかし、カニの入荷量や市況がどうなるのか、今はまったく見通せない」

道内もう減少

 笹渕の懸念は、日ロの違法操業(IUU)防止協定の影響だ。密漁・密輸出の排除を目指し、原産地証明書の添付などを義務づけている。2012年に締結され、来月にも発効する。

 北海道を代表する味覚のカニ。その多くが、ロシア産の密漁モノで支えられてきたことは業界の常識だ。

韓国では高騰

 協定発効を前にした取り締まりの強化で、すでに影響は出ている。道内への13年のロシア産カニ輸入量は2万2100トンと前年に比べて3分の2へ減少。なかでも主要輸入港の紋別は4分の1へ、稚内も半減した。

 日本に先立つ09年12月、ロシアとIUU防止協定を締結した韓国は、どうなっているのか。

 韓国もロシアからカニを輸入している。南部の水産都市・釜山(プサン)市にあるチャガルチ市場では、いけすに大型のロシア産タラバガニが泳ぎ、国内外からの観光客でにぎわう。

 しかし12年に韓国へ輸入されたロシア産カニは6600トンと、09年に比べて半分以下へ。ロシア産活カニの輸入港、江原道東海(カンウォンドトンヘ)市でも13年のズワイガニ輸入量が前年比で46%減少し、保税倉庫7カ所のうち3カ所が閉鎖に追い込まれた。

 価格は高騰し、東海市でカニと刺し身食堂を経営する金正姫(キムジョンヒ)(57)は、「今年の仕入れ値は昨年の1・6倍。1キロ7万~8万ウォン(7千~8千円)で売らなければならないが、高いと売れないので泣く泣く6万ウォン(6千円)で出している」と嘆いた。

 一方、日本海のカニ漁には好影響も出ている。韓国一のズワイガニ水揚げ港・慶尚北道浦項(キョンサンプクドポハン)市の九龍浦(クリョンポ)水産業協同組合によると、1~2年前に比べて競り値は2~3割高くなったという。

 ロシアは日韓のほか、北朝鮮と協定を締結したほか、カナダ、中国、ベトナムなどと精力的に交渉中だ。その背景に、大統領プーチン(61)の17年越しの執念がある。=敬称略=

◇日ロ違法操業(IUU)防止協定◇
 2012年9月、ウラジオストクでのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の際に締結。日本はロシアからカニなどを輸入する場合、ロシア漁業庁発行の原産地証明書の添付を義務付けるほか、ロシア税関当局から情報を受けて証明書の真偽もチェックする。従来、日本側は「密漁防止はロシアの国内問題」と締結に応じなかったが、日ロ双方の200カイリ内の操業条件を決める、11年12月の地先沖合漁業交渉で、ロシア側が「協定締結に応じなければ地先交渉に入らない」と迫った結果、日本も方針を転換した。