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北極圏 白夜の港町 ロシア・ムルマンスク

 ロシア・ムルマンスク市。人口29万5千人。5月22日から7月22日まで、水平線に太陽が沈まない白夜となる北極圏最大の街は、午後11時を過ぎても日本の昼間のような生活だ。 高さ40メートルの兵士像「アリョーシャ」がある、市街の公園からは街を一望できる。昼夜を問わず大勢の人が訪れる丘から見える港。北極圏開発をにらみ、...

北の空からの日差しに照らされるムルマンスク港と市街地=7月13日午前0時5分(国政崇撮影)

 欧州と極東を結ぶ新ルートとして、北極海沿岸、ベーリング海峡を経由する北極海航路が注目を集めている。極東の玄関口に位置する北海道にも、発展への新たな可能性を切り拓(ひら)く。「極東」第5部は同航路の拠点を目指すロシア極北の街のルポから始めたい。

 丘の上から港と街が一望できた。水色の空の下に淡いピンクに染まる船、クレーン、道路、アパート群。夕暮れ時の雰囲気だが、時間は午前0時すぎ。白夜の太陽は北の空にあった。

売れる外国車

 7月中旬のムルマンスク市。北極圏最大の街では外国車ディーラーの進出が続いていた。2010年4月の韓国・起亜自動車に続き日産、トヨタ、スズキ、独アウディ、英ランドローバーが出店。近く独BMW、トヨタレクサス、独メルセデス・ベンツも店を開く。

 「売れ筋の車は1台130万ルーブル(約390万円)。当初は1カ月100~120台売れた。競争が激しくなりましたが、今も100台近く出ます」。起亜自動車ディーラーの販売マネジャー、ポポワ・ヌルラナ(33)は笑顔を見せた。

 「政府方針で公務員、軍人の給料が上がり、主産業の鉱業も好調。市民の購買力が高まったからです」とムルマンスク州第1副知事アレクセイ・チュカビン(54)。そして自信満々にこう付け加えた。「もっと景気は良くなりますよ」

工場建設次々

 原動力は北極圏の資源開発だ。国営石油会社ロスネフチは市内で、北極海での油田開発に向けたプラットホームなどを製造する工場の用地を確保した。稼働すれば1500人の雇用が生まれる。別の石油大手も市内に拠点を整備する。

 すでに「恩恵」は波及しつつある。ムルマンスクの東約4千キロのヤマル半島で11年2月、天然ガス大手ノバテクが主導する液化天然ガス(LNG)工場の建設が始動。16~17年にも生産を始め、18年には1500万トンを出荷する計画だ。地元の物流会社幹部は「物流、燃料、ホテルなど各業界が潤い始めた」と語る。

 北極圏開発をにらみ、州は港の再開発を進める。ムルマンスク市内を南北に貫く湾の東岸には施設が集中している。それに比べて開発の余地が残る西岸に石炭、石油のターミナルを新設。西岸へ至る鉄道の引き込み線敷設が9月末にも始まる。

 北極海航路は、北極圏開発の物流を支え、生産物を欧州とアジアへ運ぶ動脈となる。チュカビンは「ムルマンスクは25年までに北極圏資源開発の戦略拠点になる。そして北極海航路の中継港にしたい」。その自信の裏付けとなるのが、同航路の発展へ向けた大統領プーチンの強い熱意だ。=敬称略=