はやぶさが到着する度に先頭付近に人だかりができる新青森駅

 2010年12月に開業した東北新幹線新青森駅が、来月1周年を迎える。3月の東日本大震災で利用者は一時減ったものの夏以降は回復基調で、青森県内の各地域も新幹線効果の取り込みに懸命だ。一方、並行在来線としてJR東日本から経営分離された青森-八戸間の沿線からはJR時代との格差に戸惑いも漏れる。青森県内に新幹線がもたらした光と影を追った。

 午前11時22分、国内最速の300キロで走る新幹線「はやぶさ1号」が新青森駅ホームに滑り込んだ。安全柵が開くと、降りてきた乗客が携帯電話やカメラを片手に次々と先頭車両に歩み寄った。

 東京の男性会社役員(67)は「はやぶさのグランクラス(最高級座席)が取れたので休みを合わせて来ました。快適でした」と3時間10分の旅を振り返った。東京の大学文学部で太宰治を研究する女子学生(20)は「弘前や五所川原を回ります。便利になりました」と、駅に飾られたミニねぶたを写真に収めた。

 本州最北端の新幹線駅である同駅の10月の1日あたりの乗降客は約7800人。県内では青森、八戸、弘前に次いで多い。

 開業してから改善した点もいくつかあった。例えば改札口にある「新幹線改札口」との表示。当初は他の駅と同様「新幹線入口」だったが、お盆などで駅に出迎えに来た県民から「到着した人が出てくる出口はどこか」と問い合わせが相次ぎ、表記を変えた。小比類巻宣典(のりやす)駅長(55)は「県民が待ち望んだ新幹線なので、使いやすい駅にしたい」と力を込める。

 開業から今年10月末までの八戸-新青森間の利用者は245万人。震災の影響を受けた3~6月を除く7カ月間では1日あたり約9500人で、特急時代より24%も増えた。

 青森県によると、県内の今年1~9月の観光客は前年同期比6・7%減の約742万人。震災直後の3、4月は落ち込んだが、6月以降はV字回復している。

 浅虫温泉の宿泊者は9月には前年比プラスに転じ、青森駅そばの青函連絡船メモリアルシップ「八甲田丸」も9月末の入場者が前年同期比で倍増した。一方、十和田湖畔のホテルなどの宿泊者は9月末で前年比6割にとどまっている。

 県観光連盟の山下英由(ひでよし)観光振興部長(51)は「外国人や団体バスツアーの割合が高い十和田や下北の回復は遅れている」と分析。「それでもあの震災を経験した割には早い。新幹線効果は大きい」と手応えを語る。

 青森では地価も動いた。軒並み下落する中で、新設された七戸十和田駅(七戸町)近くの工業地の価格は唯一、前年比横ばいとなり、県県土整備部は「企業立地の可能性が出たため」とみる。

 シンクタンク・青森地域社会研究所の竹内慎司地域振興部長(54)は「物を運ぶ高速道路と人を運ぶ新幹線の相乗効果は企業誘致の条件。タイの洪水など海外はカントリーリスクもあり、青森が国内回帰の選択肢になれば」と新たな企業進出に期待をかける。(安本浩之が担当、6回連載します)