「トンネルに入ったら息抜きできる瞬間はない」と話す沢田一久さん。後方にあるのは掘削機械「ロードヘッダー」で、1日に平均7・2メートル掘り進む

 安全に早く 工長の重責

 灰褐色の山肌を掘削機械のドリルが削り、極太のチェーンをタイヤに巻いたショベルカーが土砂をダンプに積み込んでいく。2015年度開業予定の北海道新幹線新茂辺地トンネル(北斗市、全長3255メートル)の掘削現場は、重機のごう音と土煙が充満する過酷な世界だ。

 ■地山の異音に耳

 北海道側に新設する6本のトンネルのうち最後の1本。防じんマスク、プロテクターで身を固めた作業員たちは切り羽の異変に目をこらし、時には重機を止め、地山の異音に耳を澄ます。

 工事を指揮する吉田直土木(東京)の沢田一久さん(44)は「亀裂や音など、崩れる予兆の見極めがトンネルマンのセンス」と強調する。

 沢田さんらが担当するのは、木古内町側の全長650メートルの区間。9月から5人1組、2班が交代で、日曜を除く24時間態勢で掘り進む。貫通予定は今年2月末。沢田さんは工長として2班を束ね、安全を保ちながら、早く掘るため厳しい指示を飛ばす。「この山は今は水が出ていて難しい。けがに気を付けて掘りたい」

 乙部町の漁師の家に生まれ、知人の誘いで18歳のころ、トンネルマンになった。自宅は今も乙部にあるが、正月、お盆、大型連休以外、全国の現場を渡り歩く。新茂辺地トンネルの依頼がきたのは、山梨県でリニアモーターカーのトンネルを掘っていた時だ。

 掘削班は30代が中心で函館、福島、松前など道南出身者も多い。道新幹線の現場は自宅に近く、士気は高い。

 ■信頼こそが肝心

 狭い現場で大型重機を駆使し、安全と早さが求められるトンネル工事。「すごい親方が1人いても4人がだめなら掘れない。安全に、いっぱい掘るにはチームワークが重要」。危険と隣り合わせの最前線を支えるのはプロ同士の信頼だ。(安本浩之)

 新年度を迎え、北海道新幹線の開業がまた一歩近づいた。北斗市内などの土木工事に加え、青函トンネル内でも着々と準備が進む。現場の人々を取り上げ、併せて各工事について紹介する。(12回連載します)