北陸新幹線開業を見据えて整備され、建築的な美しさが評価されているJR金沢駅

 北海道新幹線の新青森―新函館北斗間(北斗市)が開業する予定の2016年3月まであと1年5カ月に迫った。新函館北斗駅から室蘭まではJR在来線の特急で約2時間と見込まれ、西胆振は新幹線開業効果を取り込める位置にある。そのためには何が必要か。北陸新幹線が来年3月14日に開業する金沢市と富山県を22~24日に視察した室蘭・伊達・登別商工会議所の代表団に同行し、考えた。

 「首都圏からの集客にはまだまだ伸びしろがある。何をPRできるのかを考え、北陸新幹線開業を前に、首都圏に何度も足を運んだ」。代表団を迎えた金沢市プロモーション推進課の古谷健課長補佐は、語った。

 観光都市金沢の知名度と存在感は言うまでもない。加賀百万石の城下町、歴史と風土、食文化と伝統工芸…。北陸最大の観光都市が今、集客戦略の軸足を首都圏に大胆に移しつつある。

 ■500万人構想

 集客の現状は関西圏や中部圏が中心。現在、大阪からは在来線特急で約2時間半だが、東京からは上越新幹線と在来線を乗り継いで約3時間50分。しかし、来春の北陸新幹線長野―金沢間開業後は最速2時間28分と首都圏が急接近。空路は東京駅から金沢まで約3時間かかるため、新幹線は飛行機より速く、座席数も約6倍にもなる計算だ。

 追い風を受け、金沢の「本気」に火がついた。金沢市は2013年、観光戦略を先導するプロモーション推進課を設置して首都圏での宣伝に乗り出した。それまで金沢市や観光業界は「知名度にあぐらをかき観光PRは十分でなかった」(地元観光関係者)。石川県も、首都圏からの2011年の観光客数232万人を新幹線開業後の15年に500万人とする「首都圏500万人構想」を掲げた。

 「本気」になった金沢のPRは刺激的だ。世界で最も美しい駅14駅、まちなか夜間景観世界3位、最高の旅行先世界4位、ミシュラン・グリーンガイド三つ星―。宣伝資料や観光案内に世界から見た金沢の評価を並べ、金沢美術工芸大の協力で作成したロゴマークや映像で魅力を強調する。

 宿泊客を増やそうと夜の観光を重視。芸妓(げいこ)が活躍する街並みも整備した。こうした取り組みから、7月1日時点の基準地価上昇率はJR金沢駅付近の商業地で15・8%と全国1位の伸び率を記録。金沢に全国から視線が注がれる。市プロモーション推進課の古谷課長補佐は「最初、旅行会社でも新幹線開業を知らなかったが、最近は真剣に声がかかる」と手応えを語る。

 ■市民に宿題

 今後は市民の意識向上が課題。「あの人が来たら、どこへ連れて行こう」。金沢市街に、こんな言葉の垂れ幕が登場した。金沢の観光名所や食べ物の絵が描かれた垂れ幕がこれに続く。「市民全体が盛り上がらないと、おもてなしにつながらない。新幹線で来る人々をどこへ連れて行くのか。その宿題の答えとして、市民に絵を描いてもらいました」と担当者は狙いを語る。金沢の新幹線戦略は、きめ細かい。

 脅威は北陸新幹線の1年後に開業する北海道新幹線という。このため圧倒的な宣伝で首都圏への浸透を狙い、市は本年度の観光PRに約1億8千万円を投じる。11月には地上波テレビを使ったJR東日本のキャンペーンが首都圏で始まる。

 西胆振では考えられない集客戦略の規模とメニューの多さ。「わたしたちはやれることからやるしかない」。説明に圧倒された3商工会議所のメンバーから、こんな声が上がった。(津野慶が担当します)