つり上がった一本眉毛に、艶のある赤銅色の体―。ひときわ存在感を放つ国宝「中空土偶」の展示室前で=函館市臼尻町の函館市縄文文化交流センター(国政崇撮影)

 「歴史都市」発信の場に

 真夏を迎え、観光最盛期に入った道南。各観光施設はこの夏はもちろんのこと、来年3月の北海道新幹線開業を意識した新しいメニューづくりや集客策の考案に知恵を絞っている。各施設のスタッフに、それぞれのセールポイントを紹介してもらう。(10回連載します)

 旧南茅部町教委文化財係長だった20年以上前から、函館・南茅部地区の縄文遺跡群の調査・発掘に携わってきた函館市縄文文化交流センターの阿部千春前館長が3月に退任した。この遺跡群を「縄文の人たちが地域に残してくれた宝物」と語った名物館長からバトンを受け継いだ佐藤さんは、来年の新幹線開業を見据えて「宝物」をどう生かしていこうと考えているのか。

 当センターは、ご存じの通り、「カックウ」の愛称で親しまれている国宝「中空土偶」を所蔵しています。道内唯一の国宝であり、全国に6点しかない縄文時代の国宝の一つを展示しているわけですから、館長になると決まった時には責任の大きさを感じたものです。ただ、ここで働くにつれ、この施設の魅力はカックウだけじゃないことも分かってきた。

 展示室は四つに分かれ、縄文文化が始まった背景や縄文人の暮らしぶり、精神性などを順序立てて説明しています。この地域で出土した秋田産の天然アスファルトや新潟産のヒスイも展示し、当時から海を越えて本州と交流していたことが想像できます。装飾品として使っていたとみられる世界最古の漆製品をご覧になれば、縄文人の高い知識や技術に驚くことでしょう。

 土偶の顔や土器の制作といった体験メニューは、北海道新幹線開業後の商品づくりのために視察に来た旅行会社の人たちからも「子どもを連れて来たい」と良い評価をいただきました。すぐにというわけではありませんが、新しいメニューを取り入れて、新幹線で来ていただいた方にリピーターになってもらう工夫を重ねたい。

 南茅部地区は函館中心部から約30キロ離れ、函館山やベイエリアなどの観光地とに比べて距離的なハンディを抱えている。だが、佐藤さんは「函館の歴史遺産」という切り口で、他の文化財と組み合わせて発信していけば、一層の誘客は可能とみる。

 2012年に函館市教委文化財課長になり、貴重な歴史的遺産が市内にたくさんあることに驚きました。全国約60カ所しかない特別史跡の一つに指定されている五稜郭跡は「土地の国宝」だとも言える。市が修繕計画案の作成に乗り出す明治、大正期の歴史的建造物も約100軒に上ります。

 市民にとってあまりにも身近なので「普通のこと」と思いがちですが、函館は縄文時代から近代までの歴史文化が詰まった「歴史都市」で、他の新幹線沿線自治体と比べても特別な性格を持つまちです。だからこそ、南茅部の1地区だけでなく、函館市内の他地区や道南全体の文化財とトータルでPRしていくことが重要だと考えています。

 阿部前館長はテレビや新聞にもたびたび登場する有名な方で、この施設の展示物の並べ方一つとっても、前館長の考え方が反映されています。同じやり方はできないかもしれませんが、新幹線時代に向けてしっかり施設運営していきます。(聞き手・宇野一征)

 <メモ>函館市縄文文化交流センターはJR函館駅から車で約40分。2007年に国宝に指定された縄文時代後期の「中空土偶」をはじめ、隣接する垣ノ島遺跡からの出土品など約1200点を展示する。開館時間は午前9時~午後5時(冬季は午後4時半まで)。月曜休館。入館料は一般300円、学生・生徒・児童150円。問い合わせは同センター(電)0138・25・2030へ。