サケのチャンチャン焼きを堪能する参加者。道南、道東の食を一度に楽しめるのもこのツアーの魅力=9月26日、標津町の「標津番屋」

 北海道新幹線開業まで26日であと5カ月。新幹線効果を全道に波及させるには、函館に来た観光客を道内各地にどう誘導するかが課題だ。その克服を目指して道が9月に実施した函館発道東行き2泊3日のモニターツアーに同行し、魅力と将来性を探った。

 「いらっしゃい。中標津へようこそ」。空港のロビーに地元の観光業者や根室振興局職員の声が響く。9月26日午前11時半、霧に包まれた中標津空港に、東京や仙台の旅行会社社員ら25人が降り立った。道主催の函館発道東モニターツアーに参加し、その商品価値を査定する「鑑定人」たちだ。

 函館空港を出発後わずか約1時間。一行はバスに乗り換え、オホーツク海に面した標津町の交流ハウス「標津番屋」に向かう。昼時の室内には、サケのチャンチャン焼きが用意されていた。炭火で熱したプレートの上で、サケの切り身の周りに大量のキャベツを散らし、特製のみそだれをかけると、香ばしい匂いが辺りに立ちこめる。道内有数の産地・標津の秋サケを存分に味わってもらおうとの趣向だ。

 テーブルにはイクラ丼や三平汁も並び、朝日旅行東京支店の横川雅代さん(57)は「昨日は函館でイカ、今日は道東でサケを思い切り食べられる。本州の人間にはたまらない」と笑顔で箸を進めた。

 一行は、サケのテーマパーク「標津サーモン科学館」見学後、海沿いをバスで北上、羅臼町の「昆布倉庫」に立ち寄り、知床峠を越えて、宿泊先のホテル知床(オホーツク管内斜里町)を目指す。

 「シカだ!」。参加者の一人が車窓を指さして声を上げた。その先に目をやると、大きな角を持つオスのエゾシカが道路脇で草をはんでいる。「すごい」「きれい」。旅慣れているはずの旅行会社社員が興奮気味にカメラを構える。

 「これは一石二鳥の旅ですね」。観光地図「マップル」の刊行で知られる昭文社(東京)の茂呂真理さん(39)が満足そうに語った。一行は、東京や仙台から空路やJRを使い9月25日に函館に到着、観光を楽しんだ後、翌日午前には道東入りした。「函館の夜景や金森倉庫群など見た翌日に道東で乳牛やシカを見られる。実に新鮮です」

 開港都市の歴史的な街並みを探索できる函館、北海道ならではの大自然を満喫できる道東。北海道観光の両極の魅力を凝縮したツアーだというのだ。

 来年3月に北海道新幹線が開業すると東京―新函館北斗間は約4時間で結ばれる。函館観光を目的に新幹線を利用した人が、道東に直接足を延ばす。そんな観光商品に将来性はあるか。

 今回、函館―中標津間約400キロを結ぶチャーター便を運航したフジドリームエアラインズ(FDA)チャーター営業グループの松島英祐さん(32)は「ツアーとして魅力は十分。北海道の両端を一度に楽しめる空路の優位性も感じた」と評価した。函館と道東をつなぐ旅に「鑑定人」たちはひとまず合格点を与えた。(袖山香織、写真も)