明治時代の洋画家青木繁の生家で解説する旧居保存会の荒木康博会長(右端)=20日、福岡県久留米市

 来年3月に開業する北海道新幹線で訪れる観光客を、どうやってマチに呼び込むか―。室蘭、伊達、登別の3商工会議所の代表団は20~22日、九州を訪問し、2011年3月に鹿児島ルートが全線開業した九州新幹線の沿線の取り組みを調査した。視察に同行し、新幹線対策を考えた。

■体験型企画80種

 夏の余韻が残る福岡県久留米市。視察団を乗せたバスは、住宅街にある古い民家の近くで止まった。国重要文化財の油絵「海の幸」を描いた明治時代の洋画家青木繁の生家だ。

 「遠くからようこそ」と青木繁旧居保存会の荒木康博会長(65)が迎えた。解体予定を知った荒木さんら近隣住民が協力、寄付金などで守り抜いた結果、久留米市が取得、住民らの保存会が管理運営する。「1カ月10人でも来れば良い」(荒木さん)と入館無料で始めた施設は11年度の新幹線開業以降、年間約8千人が訪れるようになった。

 人口約31万人の久留米市は「もともと観光地ではなかった」(同市)が、新幹線開業後、こうした住民手作りの観光資源が増え、集客効果を上げている。博多駅(福岡)から新幹線久留米駅まで約17分と従来の半分になり「千載一遇のチャンス」(同)と、官民で観光に力を入れる。

 そうした官民の動きを束ねるのが「久留米まち旅博覧会」事業だ。先の青木繁旧居周辺の散策、農家の流しそうめん、老舗喫茶店巡り、物流センターの倉庫探検、久留米発祥のタイヤメーカー「ブリヂストン」の社員食堂体験など、市民らが企画した地元色あふれる参加・体験型行事「まち旅」を、観光シーズンなどに設定した2カ月程度の期間内で同時多発的に行う。

 新幹線開業を3年後に控えた08年、官民主催で始まった。毎回約百人以上が参加する企画会議を開き、市民や市内の企業、団体から寄せられた百件以上の提案を審査、珍しさや地域性をもとに絞り込む。当初39種類だった「まち旅」は今秋の11回目では80種類にも増えた。現在は12年設立のNPO法人久留米ブランド研究会が運営、青木繁旧居保存会の荒木会長は、同研究会の理事長を務めている。

■再訪促す仕掛け

 「まち旅」体験は今や久留米観光の柱に育った。予約制で有料だが最近は1600人以上が参加、キャンセル待ちも出る盛況ぶり。理事長の荒木さんが「まち旅」で重視するのは住民の心だ。「観光客に一番喜んでもらえるのは住民の笑顔です。目で見た感動は15分で忘れる。でも人から受けた感動は一生忘れない。だから『おもてなし人』を育てることが大切です」と、まち旅を行う意義を語る。

 久留米市は「まち旅」など新幹線戦略の最終目標を「観光振興、定住者増加、地域活性化」(久留米市)と位置付ける。市内で少しずつ成果を実感する声が出始めた。久留米商工会議所青年部に所属し、老舗料亭を経営する魚義の倉八寿一専務(41)は「店の売上高は新幹線開業前の約1・8倍で、今も伸びている。大阪方面の人が増えた」と言う。「新幹線で人が増えるのは間違いない。大事なのはまた来てもらう仕掛けです」と、地域の魅力を掘り起こす大切さを強調した。(津野慶が担当します)