にしむら・きょうたろう 1930年東京生まれ。東京都立電機工業学校卒業後、人事院に入る。65年「天使の傷痕」で江戸川乱歩賞、81年に「終着駅殺人事件」で日本推理作家協会賞を受賞。十津川警部が登場する作品の多くはテレビドラマ化されている。道内を舞台とした作品として「青函特急殺人ルート」「函館駅殺人事件」「釧路・網走殺人ルート」など多数。

 北海道新幹線の開業が、いよいよ3月26日に迫った。北海道の鉄道や全国の新幹線を舞台にした物語を数多く著してきたトラベルミステリーの第一人者、西村京太郎さんも、その開業に熱い視線を送る。北の大地を初めて駆ける超特急、そしてそこから道内各地につながる鉄路は、西村さんの物語にも新たな風を吹き込むだろうか。(聞き手・安藤健)

 ――北海道にいよいよ新幹線が上陸します。

 「東京から4時間ほどで新函館北斗に着くそうですね。心理的に近くなる。青函連絡船の時代には、青森港で銅鑼(どら)の音に見送られ、本州と別れを告げるという旅でした。青函トンネル開通後は、よく夜行列車に乗りましたが、夜のサロンカーで車掌さんから青函トンネルの話を聞き、朝起きると北海道というのが好きでした。それが、一気に新幹線でつながる。日本は狭くなったなと感じますね」

 ――北海道新幹線を小説の舞台に選ぶなら、どんな物語が書けそうですか。

 「『北へ還(かえ)る』というのは私の永遠のテーマです。ただ、東北と北海道では、同じ『北』でもイメージがかなり違う。東北には、敗者が逃亡するという暗さを感じますが、北海道には『新天地』という言葉が似合う。都会から逃げてきた人が立ち直る『敗北からの再生』がテーマでしょうか」

 「私は、新幹線でも在来線でも必ず乗車してから書きます。もちろん、北海道新幹線にも一度乗ってみたいですね。新幹線には必ず売り物があるので、書くときにはそれを意識します。北陸新幹線のときには『東京―金沢2時間28分』でした。北海道新幹線の場合は何でしょう。新函館北斗駅か、青函トンネルか。それを考えて書きたいです」

 ――今回の開業は、新函館北斗までの区間です。

 「函館には一昨年11月、久しぶりに客船『飛鳥Ⅱ』の日本一周クルーズで立ち寄りました。函館のマチはやたらに明るかった。観光客でもにぎわっていました。でも、函館の後ろには北海道がある。新幹線でたどり着けるのは北海道の入り口、玄関口。だから、ここから旅があらためて始まるんだと思わせるような乗り物になればいいですね」

 ――新幹線で北海道に着いたお客さんが、そこからどんな旅をするのが理想ですか。

 「新幹線にどんどん接続する列車があればいい。北海道をぐるっと回れる列車を走らせるのもいいと思います。先日、妻とJR九州の豪華寝台列車『ななつ星in九州』に乗りました。車内で生のピアノ演奏が聴けたり、途中下車して列車と同じデザインのバスで観光したりと、乗客を飽きさせないおもてなしがありました。北海道が今、冒険しないのは残念です。北海道だって知床や釧路湿原、有珠山や昭和新山もある。売り物がたくさんあるのだから、旅の面白さを味わわせてくれる列車ができれば、乗ってみたいですね」