夏休みも終盤に入り、もうすぐ2学期。夏休み明けは子どもの自殺が増える傾向がある。保護者や周囲の大人はどうすれば子どもたちのSOSに気づき、自殺を食い止められるのか。また子どもたちはどこに救いを求めればいいのか。自殺を防ぐ手だてを関係者に話を聞いた。

 「今リストカットしたの」。電話で子どもの悩み相談に応じているチャイルドラインさっぽろの相談員は2年前、中学生とみられる女子生徒から自殺をほのめかす電話を受けた。出血が止まっているかを確認し、「何があったの? 話してみて」と語りかけた。生徒はポツリポツリと話しだすうちに冷静になり、「またかけます」と電話を切った。

 「さっぽろ」理事の水口良子さん(60)は「まずは子どもの話を受け止めてあげることが大切。自分のことを認めてくれていると分かれば、気持ちが落ち着く」と語る。

 札幌市精神保健福祉センターの鎌田隼輔所長(精神科医)も「今は地域社会のつながりが希薄で、他人の子には声をかけづらい雰囲気があるが、大人が自分に関心を持っていることが分かるだけで救われる。子どもたちに見守っているというメッセージを送ってあげてほしい」と呼びかける。

 学校の変革も欠かせない。札幌市では2010~12年に毎年1人ずつ、市立中学校の生徒がいじめをほのめかす遺書などを残して自殺した例が相次いだ。このうち2人は2学期が始まってすぐだった。

 こうした経緯から、市教委は13年から毎年8月下旬~9月下旬を「子どもの命の大切さを見つめ直す月間」とし、各学校で自殺防止を児童生徒に呼びかける取り組みを実施。毎年7月に、教員が子どもの話の聞き方や、接し方について専門家から学ぶ研修会も開く。市教委は「子どもたちの自殺のサインを見逃さないよう、家庭と連携していきたい」とする。

 子どもに学校以外にも居場所があると伝えることも大切だ。昨年8月末に、神奈川県の鎌倉市図書館の女性司書が公式ツイッターで「学校が始まるのが死ぬほどつらい子は、学校を休んで図書館へいらっしゃい」とつぶやき、話題になった。つぶやきのリツイート(転載)は10万回以上。菊池隆館長は「反応はほとんどが大人からだった。学校でつらい経験をしたことがある人たちから共感を呼んだのではないか」と振り返る。

 杏林大兼任講師で社会病理学者の舞田敏彦さん(40)は「今は学校に行かなくてもインターネットで情報や知識を得られる時代。学校だけが教育の場ではないのに、行きたくない学校に行かなくてはならない閉塞(へいそく)感が、子どもたちを苦しめている。学校のことで死ぬほど悩むぐらいなら、無理して行く必要はない。学びの場は多様にあることを子どもたちに伝えることも重要だ」と指摘している。(片山由紀)

■29日からチャット相談

 チャイルドラインさっぽろが加盟するチャイルドライン支援センター(東京)は、夏休み明けの自殺防止策として29日~9月9日(3、4日は除く)の午後4~9時に、ネットのオンラインによる相談を実施する。チャット形式で相談員が相談に乗る。サイトは「チャイルドライン」のホームページから検索できる。

 夏休み明けの子どもの自殺 内閣府の調査によると1972年~2013年の42年間で、18歳以下の子どもの自殺は1万8048人。自殺者を日付別にまとめたところ、9月1日が131人で最多だった。8月下旬や4月上旬も1日50人を超えており、長期休暇明け前後に自殺が増えることが分かった。

 厚生労働省はこうした兆候について「どうしても休み明けは生活環境が大きく変わるため、プレッシャーが大きく、精神的動揺が生じやすい」とみる。

 14年度の自殺要因のトップは、中学生男子では学業不振、女子は友達との不和、高校生男子は学業不振、女子はうつ病だった。