社内で田中社長(右)と雑談する男性社員たち。「子どものために休みを取りたいと普通に言える会社」と口をそろえる

 子育てに関わりたくても、職場に理解がなくて「休みが取れない」「早く帰れない」と嘆く男性は多い。父親が働きながら子育てできる職場づくりには、どういう取り組みが必要だろうか。実践している企業を探ってみると、「父親が子育てするのは当たり前」と考えるトップの姿勢が見えてきた。

 札幌市内のマーケティング業「パラシュート」に勤める伊藤政秀さん(44)は昨年4月に同社に転職。入社1カ月後に、4歳の娘が病気で1週間入院した。田中研治社長(41)に相談すると、「休んで看病した方がいい」と勧められた。結局1日休みを取り、共働きの妻と交代で入院に付き添った。

 伊藤さんは「前の職場なら、子どもを理由に休むなんてとても言い出せない雰囲気だった。今の会社に感謝している」と語る。今も娘が体調を崩し保育園を休まざるを得ない日は休暇を取ったり、早退する。

 同社では35人の社員のうち、6歳以下の子どもがいる男性社員は7人。仕事をいったん切り上げて子どもを幼稚園に迎えに行き、妻の帰宅後に再び出社したり、幼稚園や保育所の行事に参加するために休みを取る社員は珍しくないと言う。

 田中社長は「今は共働きが主流で、夫婦協力しながら子どもを育てるのは当たり前。特別なことをしているつもりはない」とした上で、「社員それぞれに事情がある。働きやすいと思える会社をいっしょにつくっていきたい」と語る。

 札幌市内の写真撮影業「村重スタジオ」で働く佐々木謙さん(23)は昨年8月、第1子が生まれた後に1週間育休を取った。帝王切開で出産した妻に寄り添いたいと考えたからだ。

 提案したのは同社の村重道男社長(69)だ。「産後すぐの子育ては本当に大変。夫が妻を支えるのは当然だと思った」と語る。男性社員が育休を取得すれば企業に助成金が入る国の制度なども調べ「会社としても利点がある」と考えた。

 佐々木さんは「できるだけ周囲に迷惑をかけないよう仕事を調整して休みに入った。子どもが生まれてから、早く帰るために仕事の効率化を考えるようになり、働き方が変わった」と話す。村重さんは「子育ては仕事にいい影響を与える。子育てしやすい雰囲気を作れば、会社が活性化する可能性は広がると思う」と自信を深めている。

 厚生労働省の調査では、2015年の男性の育児休業取得率は2・65%。増えているとは言え、20年までに13%とする国の目標にはほど遠い。

 内閣府が13年9月に行った「ワーク・ライフ・バランスに関する意識調査」(複数回答)によると、男性で「家事や育児時間を増やすために必要だと思うこと」で最も多かった回答は、正社員は「残業が少なくなること」で34・5%、非正規社員は「休暇が取りやすくなること」で38・8%。「育休取得に必要と考える条件」(正社員のみ回答)では、「職場の理解」が最多の34・7%だった。仕事量もさることながら、職場の雰囲気が男性の「仕事と子育ての両立」を左右すると言っても過言ではない。

 男性育休アドバイザーで企業の働き方支援などを行っている札幌市内の藤村侯仁(きみひと)さん(43)は「子育てに関わりたいと考える若い男性は多く、企業は子育て支援を経営戦略として位置づけなければ、良い人材を逃し、今後の成長にも影響すると認識してほしい」と強調。子育てする男性社員については、「普段から自分の状況を上司や同僚に伝え、理解を求める努力が大切。育児に関わると仕事への視点も変わる。成長できるチャンスだと思ってほしい」と呼びかけている。(片山由紀)