表1

表2

近藤啓史さん

佐藤広和さん

間部克裕さん

 道の人口の3分の1が集まる札幌市が、2017~23年度の7年間の総合的ながん対策を盛り込んだ「がん対策推進プラン」をスタートさせました。計画の概要と、3月に開いた記念講演会の内容を紹介します。

 がんは札幌市でも死因の1位で年間6千人近い市民が亡くなっています。今後も増えるがんに対応するため、市民のがんの動向を反映させた初めてがん対策の計画を作りました。

 札幌市のがん死亡率(人口10万人当たりの死亡者数・年齢調整済み)は86・8、全国より7・8人分も多い=表1=。部位別の死亡者は肺がんが最も多く、肺がん死亡率(同)も男性28・4、女性9・2と全国より多いのが特徴です。

 プランは全体目標と、それを達成するための分野別施策があります。がん死亡率は毎年2ずつ減らし、23年度末の目標を70・3としました。分野別施策の柱は《1》予防《2》早期発見・治療《3》患者・家族の支援―となっています=表2=。

 予防の中心は喫煙対策です。25・2%と20政令市の中で最も高い喫煙率が、肺がん死亡率に大きく関与しているとして、保険診療による禁煙外来の受診を市民に働きかけます。特に、本年度から、子育て世帯の喫煙者に禁煙外来の治療費を助成します。

 さらに、受動喫煙防止策を「分煙ではなく全面禁煙」と位置付け、家庭と職場の対策に集中的に取り組みます。計画の7年間で「喫煙率10%」と「受動喫煙のない全面禁煙の職場」それぞれを実現を掲げました。

 また、胃がんの原因、ピロリ菌の保険診療による除菌を積極的に推進します。18年度以降、市が行う健診・検診でピロリ感染の有無などを調べる検査を始めます。

 早期発見では、職場や個人で受けるがん検診の実態を把握したうえで、低い市全体の受診率向上策に取り組みます。要再検査とされた人の精密検査受診率100%を目標にしています。

 札幌市保健所の石川奈津江・健康推進担当課長は「がん対策は市民、地域、関係機関、市が連携し社会全体で進めることが大切。早期発見のために定期的にがん検診を受け、予防するために禁煙などに主体的に取り組んでいただきたい」と市民に呼びかけています。

■専門医ら3人が講演

 記念講演会は、市内のホテルで開かれ、がんの専門医ら3人の話に約200人の市民が耳を傾けました。

治療格差解消を

 北海道がんセンター院長(札幌)の近藤啓史さんは「北海道も札幌市も、がん死亡率が(全国よりも)高い」と指摘。がん死亡率が高いのは《1》がんになる人が多い《2》助かるがん患者が少ない《3》その両方―の三つと考え方を示しました。がん対策は、がんになる人が多ければ禁煙や感染症など予防に、助かるがん患者が少なければ早期発見の検診や、病院・地域間の治療成績の格差解消に、取り組む必要があると強調しました。

禁煙受診勧めて

 JR札幌病院健康管理部長で禁煙専門医の佐藤広和さんは、日本では喫煙で年12万9千人が死亡しその6割ががん、受動喫煙でも年1万5千人が死亡するとし、「たばこに有害物質や発がん性物質が含まれているのは科学的に証明された事実。他人が吸った煙で健康被害があってはならない」と述べました。札幌市民の喫煙率は政令20市で最も高いとも。禁煙外来の治療を紹介し「周囲に受診を勧めてほしい」と話しました。

ピロリ菌除菌を

 国立病院機構函館病院消化器科部長の間部克裕さんは「毎年約5万人が命を落とす、胃がんは早期に見つければほぼ全員が治る」と検診受診の大切さを強調。さらに、日本人の胃がんの99%以上がピロリ菌感染が原因で「ピロリ菌の除菌治療で胃がんは予防できる」と説きました。ただし、中高年は長年の感染で胃の粘膜の萎縮があるので、除菌後も胃の内視鏡検査を定期的に受け続けることが重要です、と呼びかけました。(編集委員 岩本進)