「死後離婚」という刺激的な言葉がネット上などで注目されています。「夫やその両親と一緒のお墓に入りたくない」「夫の死後、夫の両親の面倒を見たくない」。そんな思いから、特に女性の関心を集めているようです。手続きや注意点をまとめました。(編集委員 福田淳一)

 ――そもそも死後離婚とは何ですか。

 「死後離婚」とは造語で、そういう制度があるわけではありません。配偶者とは生前に離婚することができますが、死後にはできません。今言われている「死後離婚」とは配偶者の死後、折り合いの良くない配偶者の両親ら親族と縁を切ることを指すことが多いようです。2015年ごろから注目され始め、今年2月にはこの問題を解説した本も出版されました。

 ――なぜ関心を集めているのでしょうか。

 この問題に詳しく、相談を受けたりセミナーを開いている札幌の行政書士、塩崎由花里さんによると、関心を寄せる人の大部分は女性だそうです。男性が年上の結婚が多く、平均寿命も女性の方が6歳ほど長いため、配偶者と死別するのは女性が多いという事情がありそうです。

 また塩崎さんは、お墓の問題で悩んでいる女性が多いとして、散骨や合同墓などの情報がネット上で増えていることも死後離婚が注目される理由とみています。少子化で一人っ子同士の結婚も増え、夫を亡くした妻が夫の両親の介護などに直面しやすいことも背景にありそうです。

 ――死後離婚の具体的な手続き方法を教えてください。

 配偶者の死後も「姻族」と呼ばれる配偶者の親族との縁はなくなりません。その範囲は配偶者の父母、兄弟姉妹、めいやおい、おじ、おばなど3親等以内です。死後離婚には、まず姻族関係終了届を市区町村に提出します。これで姻族関係を終了することができます。これを提出しても戸籍や姓はそのままです。もし旧姓に戻りたい時は「復氏(ふくうじ)届」を市区町村に提出し、戸籍を元の籍か新しい籍を作って移すことなります。

 ――メリットは何でしょうか。

 姻族関係終了届を出す際に配偶者の両親、親族の同意は不要で、手続きは簡単です。配偶者が亡くなった時点で相続の権利が発生しているので、その権利がなくなることはありません。遺族年金もそのまま受け取ることができます。

 婚家のお墓に入らなければならない決まりはなく、結婚した女性が夫やその両親のお墓に入るのは社会的慣習にすぎません。それでも配偶者の親族との縁を切ることにより、「一緒のお墓はいや」という決意を示す効果はありそうです。

 ――デメリットは何でしょうか。

 行政書士の塩崎さんは、「配偶者の両親はじめ親族からなじられるぐらいの覚悟は必要」と話しています。そして、こちらから縁を切るのですから、別居して墓は自分で作る必要があることや、配偶者の両親の年金などを生活費として当てにできなくなる点を指摘しています。また、縁を切る手続きをした人に、遺言書で遺産を残す人もまずいないでしょう。

 ――この仕組みを知る意味と注意点は。

 「夫が亡くなったら、折り合いの悪いしゅうとめと自分だけの生活になるのか」と心配する女性もいるようです。塩崎さんは「選択肢の一つとして、こういう方法もあることを知っておくだけで、気持ちが違ってくると思います」と話します。ただし姻族関係終了届をいったん提出すると、亡くなった配偶者の親と養子縁組をしない限り元の関係には戻れませんので、「人の気持ちは変わることもあります。手続きは簡単ですが、よくよく考えて」と慎重な対応を勧めています。