屋内飼育を啓発する「モデル猫」をかわいがる小学生たち=福岡市家庭動物啓発センター

 春。ペットなど動物の問題を扱う行政や民間団体にとって、頭の痛い季節の到来だ。動物たちの繁殖期であり、特に野良化した猫の子が街のあちこちで見られ、苦情も増えてくる。国内では、こうした子猫の多くが「殺処分」されるのが現状だ。どうしたら不幸な動物を減らせるのか。今年3月下旬、福岡市が熱心な取り組みをしていると聞き、訪ねてみた。

 集合住宅や飲食店が立ち並ぶ福岡市西区の中心部に、市の「家庭動物啓発センター(ふくおかどうぶつ相談室)」がある。夕方、近くに住む小学生の女の子3人が訪ねてきた。お目当ては、センターが飼育する「モデル猫」たちだ。

 平日の午後4時から30分間、センターは「お世話体験」と称して市民が猫とふれあう時間を設けている。3畳ほどのガラス張りの飼育室で暮らすモデル猫は、けがなどで収容された元野良猫が中心。「猫が大好き」と話す3人は職員と餌やりや猫用トイレの掃除を済ませ、猫をなでた後、満足して帰っていった。

 センターは動物の収容や殺処分を目的に、市内に2カ所作られた施設の一つだった。しかし国の法改正などを受け、市が動物愛護管理に関する計画を策定した2009年以降、犬猫の殺処分数は年間約3千匹から500匹前後に激減。動物の正しい飼い方を啓発する施設に衣替えした。

 同市動物愛護管理センターの椿本聡所長(49)によると、持ち込まれる動物や殺処分の数は減ったものの、猫については「地域で子猫が生まれた」「餌やり、ふん尿が迷惑」などの苦情や住民トラブルが絶えず、「街の中をさまよう猫の数は実感としてそう変わらない」。モデル猫は人が責任をもって世話をする「屋内飼育」を勧め、飼い主が分からないことで殺処分される不幸な動物を減らす啓発活動の一環という。

 福岡市は、野良猫に不妊去勢手術を施し、一定のルールを定めて地域で飼育する「地域ねこ活動」や、郊外にあるもう一つの施設「東部動物愛護管理センター」で「モデル犬」とのふれあい体験を行ったり、犬や猫の譲渡などの多彩な情報をインターネットで発信する「わんにゃんよかネット」を充実させるなど、さまざまな活動を展開する。

 椿本所長が注目するのが、同じ政令指定都市の札幌市だ。昨年10月施行の札幌市動物愛護管理条例について「猫をやむを得ず外に出す場合は避妊去勢手術をし、迷子札などで飼い主がいることを明示する(同条例第12条)など、厳しめの文言で市民に責任を求めたのは先進的」と評価する。

 北海道獣医師会の高橋徹会長(69)は「札幌でも市民が動物について学び交流できる場を作ることを目指しており、福岡の取り組みは参考になる。条例が絵に描いた餅にならないよう、しっかり広報して理解を得なければならない」と話している。(元井麻里子)