犬や猫はよく、よだれを垂らします。おやつを見せて「待て」をさせると、舌なめずりをし、よだれを垂らし出しますが、これは生理的に健康な反応です。

 しかし、中には体調の異常による病的なよだれもあります。代表的なのは動揺病(乗り物酔い)です。これは乗り物の持続的な振動や加速により、内耳の前庭器官が機能的に変化することで起こります。不安そうに動き、多量のよだれ、あくび、嘔吐(おうと)などの症状が出ます。嘔吐が続くと血圧が低下して脱水症状を招くことがあります。

 乗り物酔いを防ぐには、まず車に乗せて移動するときは空腹の状態で乗せ、車酔いでよだれが出る前に休憩を取ることです。落ち着いたら好きなおやつを少しだけ与えてください。目的地に着いたら、おやつをあげて十分に遊んであげましょう。これを繰り返すうちに車が大好きになり、車酔いから解放されます。

 口内炎が原因のよだれもあります。犬は猫ほど口内炎の発症率は高くありませんが、口の中の異常による単純な粘膜の炎症から、腎臓機能障害など全身の機能障害に発展するものまで幅広くあります。深刻なものは口腔(こうくう)内が赤くなり、血液が混じり悪臭のある粘液状のよだれが口唇のまわりにも付着し、口が痛いためにえさも食べられない状態になります。口のまわりを触られるのを嫌い、すぐに動物病院に行かないと手遅れになるかもしれません。

 口の中に異物が入ることで、よだれが出ることもあります。犬の場合は骨片や木片、プラスチックが歯間に挟まったりすることが多く、猫では釣り針やひも、草花のとげが口の粘膜に刺さったりして、よだれが出る場合があります。犬で歯間に物が挟まった時は、異物感があるので前足で顔面をひっかく動作を必死にすることがあります。

 食道の通過障害もよだれの原因となります。食道粘膜の損傷や炎症、狭窄(きょうさく)などにより、正常に食事を飲み込めないとよだれが出たり吐き出したりして食欲不振になりますので、続く時は精密検査が必要です。

 また、よだれが常時出ているという場合は、ほとんどが歯周病、特に歯槽膿漏(しそうのうろう)が原因です。歯周病は野生動物での発症は少なく、家庭動物で犬や猫に多く見られ、3歳以上の飼い犬の80%以上が歯周病にかかっていると言われます。

 歯周病は、歯垢(しこう)中の細菌が原因で、歯肉、歯槽骨、歯根膜およびセメント質の歯周組織に炎症が生じた疾患です。歯周炎が進むと、歯のまわりが化膿(かのう)し歯が脱落してしまいます。犬を抱くと耐えられないほどの悪臭に飼い主さんは顔をしかめることになりますし、ペットは常時その膿汁(のうじゅう)を飲み込んでいるために、腎不全などの全身疾患にかかるケースも多くみられます。

 最近は家庭で犬猫の歯磨きを毎日するという方が増えていますが、ペットの健康を保つためにも重要なことと言えるでしょう。(高橋徹=高橋動物病院名誉院長、北海道獣医師会会長)