自身の母の介護体験を語る中村学さん

 今月2日、札幌市内で開かれた「さわやか介護セミナー」(北海道新聞社など主催)で、元お笑い芸人の介護福祉士、中村学さん(53)=島根県在住=が、自身の8年に及ぶ母の介護経験について語った。「笑う門にはいい介護」と題した講演の内容を紹介する。

 島根から東京へ出て、20代半ば過ぎから芸人として歩み出しました。ようやく笑いが取れ始めた時、母が脳梗塞で倒れたのです。

 芸人を辞め、田舎で母の介護を始めました。母は当時65歳。おむつは25分ぐらいかけてはかせていた。半年で、母に「ふざけるな」と言うほどストレスを感じていた。介護が頭から離れない。働いておらず、お金の不安もありました。ストレスを母にぶつける生活が5年ほど続きました。

 転機は35歳の時。母がデイサービスに通うようになりました。職員と話す母は自分といる時にはなかった笑顔を見せていました。

 「人を笑顔にして元気にするのが介護」と感じ、20代の時に人を笑わそうと志した経験が生かせるのではと思ったのです。半年後には、求人を見て特別養護老人ホームに勤めました。

 ただ、家での介護とは勝手が違い、怒りがコントロールできなくなりそうでした。そんな中、近所の人と話す機会があり、介護のストレスは自分だけではないと知りました。笑顔で介護できるような取り組みがしたいと、介護経験の講演をするようにしたのです。

 母は家での介護の後、老人保健施設なども使い、86歳で寝たきりになり、昨年(87歳で)他界しました。

 介護への対応法を私なりにお伝えしたい。まず、人に悩みを話すこと。解決策を教えてくれるかもしれないし、「自分は一人ではない。なんとかなる」とも思えます。二つ目は仕事を辞めないこと。介護離職が年間10万人いるといいます。介護保険を使いケアマネジャーさんに相談し、辞めずに介護することです。

 ストレス解消も大切。介護が2時間なら、ストレス解消にも2時間使うくらい心のメンテナンスは大事です。また、家で介護したいという方もいるでしょうが、施設入所も頭の中にあっていいと思います。

 身内にも相談しましょう。口から食事できなくなったらどうするかは、医師からよく聞かれます。(胃ろうで)胃から栄養を直接とる、点滴でとるなど、家族は選択に迫られる。その時、本人の意向を確認しているか、家族で決めているかが重要です。私は母に事前に確認していました。最後に、認知症も勉強しましょう。正しい対処法を知っておくべきだと思います。

 介護体験を通じ、介護は親が命懸けでする最後の子育てで、介護を子どもに見せることは、命の関わり方を見せるしつけだと思いました。母が懸命に生きてくれて感謝しています。介護するときは笑顔で包み、最期は涙で送る。それが私から伝えたいことです。(桜井則彦)