認知症カフェで誕生会を開いていた高齢者たちと交流する渡部砂季さん(奥)

 福祉専攻の学科がある専門学校や大学以外でも、福祉や介護分野について学ぶ機会が広がりつつある。背景にあるのは、障害の有無や年齢に関係なくサービスを提供する「ユニバーサルサービス」や、誰もが使いやすい施設や商品などを設計する「ユニバーサルデザイン」という考え方だ。札幌市内の二つの学校での取り組みを例に紹介する。

 札幌観光ブライダル・製菓専門学校では、航空機の客室乗務員らを養成するエアライン学科など、サービス関連の4学科でユニバーサルサービスの講義を行う。

 2015年から、認知症サポーター養成講座も開講。認知症の人や家族、地域住民が交流する認知症カフェ「コミュニティ・カフェ ふうしゃ」(札幌市西区)での実習を始めた。

 2年生の学生70人が1日4人ずつ交代で、認知症の人や高齢者、地域住民と歓談、お菓子作り、囲碁などを一緒にするなどして接遇を体験した。

 このうち渡部砂季さん(20)は、仲間内で誕生会をしていた高齢者グループの輪に入った。「お見合い結婚だったんですね」「私たちが小さいころは戦争で大変だったの」―。世代の離れた人生の大先輩との会話を楽しんだ。

 誕生日を祝ってもらった荒木光子さん(83)は「孫より若い世代です。一緒に過ごせてうれしいですね」と笑顔を見せた。渡部さんも「接客業の仕事では、お年寄りとも障害者とも接する機会がある。将来に向けてコミュニケーションの良い経験になった」という。

 宮越真里奈さん(20)は、カフェで開かれていた手話サークルに飛び入り参加。ろうあ者3人を含むサークルの会員11人と、さまざまな人の名前を考えて順番に手話で表現する練習に挑戦した。専門学校の講義で手話を習った宮越さんだが、会員の豊かな表現力に感銘を受け、「口を大きく開けて、いつもより大きな手ぶりでやってみました。もっと勉強して伝わるようになりたい」と話した。

 同専門学校で指導する木村実希講師は「ユニバーサルサービスは座学だけでは分からないことも多い。実習を充実させていきたい」としている。

 一方、札幌市立大学のデザイン学部は、ユニバーサルデザインを必修科目としている。2月に札幌などで開催された冬季アジア大会では、学生に一般の車いす利用者も加わり、設備の状況や情報の伝え方などの実地調査を行った。

 開会式では、会場に字幕画面が設置され、あいさつをする人の言葉が表示されたものの、字が小さくて見づらかった。また、入場の際に使う通路も車いすの幅ギリギリだったという。調査に参加した大学院1年の安田創(はじめ)さん(23)は「字幕の配慮はあったが、高齢者や外国人などさまざまな人が来るのを想定していないのではと感じた」と話す。

 実は安田さん自身、車いす利用者だが、入学するまでユニバーサルデザインを意識することはなかった。大学の講義を受け、「色弱などの視覚障害や言葉の分からない外国人、子どもなど、幅広い視点で不便さを判断するようになった」という。

 同大の過去の実習では、札幌市円山動物園で誰にでも見やすく分かりやすい絵文字(ピクトグラム)を使った獣舎の案内板を提案し、採用されたりもしている。同学部の酒井正幸特任教授は「学生はデザイナーだけでなく、メーカーや行政などにも就職する。誰もが快適に使える商品や行政サービスという点でもユニバーサルデザインは重要」と話している。(桜井則彦)