ストレッチなどのセルフケアができる浅湯もいい

美と健康づくりの新機軸

 不思議な宿が昨年の暮れに「生まれた」。正確にはリニューアルだが、大きく変わったのはしつらえではない。

 端正な玄関で、ブーツから解放され、柔らかなスリッパに足を入れる。知人の邸宅に招かれたようなくつろぎ感はいつも通り。ところがその後のチェックイン時に、およそ聞いたことがない問いかけが…。ストレスで疲れた心を「リラックス」したいのか、元気のない体に「エナジー」を与えたいのか、体の代謝を高め「デトックス」したいのか―つまり「翌朝なりたい自分は」と問われるのだ。

 三つのコースから選択した後に差し出されるのは、目的に合わせた中国茶のポット。部屋で、あるいは湯上がりやエステの後に1煎(せん)、2煎…。移り変わる香りや味の変化を楽しみながら5煎をいただく「ティーセラピー」に用いるためだ。

 圧巻の晩餐(ばんさん)は「美づくり」の食卓。陰陽五行の薬膳料理と北海道の旬の食材をかけ合わせた斬新なコースだ。繊細な味覚の層を幾重にも織り込んで仕上げた料理の数々は、目にも舌にも新しい。そして食べ進むにつれ、体の内側に自然なぬくもりが灯り、気血のめぐりが生まれていくのがわかる。

 ティーセラピーと食事を一貫して手がけるのは、国際薬膳調理師と中国茶インストラクターの資格を持つ中国料理第一人者の石井登シェフだ。北海道の野、海、山のものが、その卓越したセンスと特別な知識をくぐり抜けて美と健康のための一皿へ。「どこにもない宿と確信しています。私自身にも新たなチャレンジ、進化を続けたい」

 風呂はシンプルで心地よく、雪見の露天もオツ。なめらかな湯は自家源泉3本をブレンドした食塩泉だ。

 温泉と食養生、エステのボディーケアやヨガなどを複合した全く新たな「TOJI SPA SUICHO」。関心をお持ちになった男性読者諸氏、ごめんなさい。もうここは女性専用の宿に生まれ変わったのです。(旅行ジャーナリスト)

住所 札幌市南区定山渓温泉西3の57
電話 011・595・3330
泉質 ナトリウム-塩化物泉
1泊2食料金 2人1室の場合1人1万7500円(税別)から。入館は中学生以上の女性のみ
日帰り入浴 不可
交通 札幌中心部から車で国道230号経由、約45分