浅めの湯船は心臓への負担も軽く、健やかに長湯が楽しめる

中国芸術が彩る源泉の湯

 ホテルや宿が林立するにぎやかな温泉街からは1キロほど離れた、ここは定山渓の「別の顔」。山木立を背にしてたたずむ客室八つの宿は、趣味人の別荘を思わせる閑雅な風情だ。それもそのはず、かつては大手住宅メーカーの保養施設で、昨年秋に美術関係の仕事に携わる中国の女性オーナーが旅館として再生させた。端正な造りのロビーや客室を飾るのは、中国の芸術家たちの味わい深い書画の数々だ。

 宿の名は中国語で「山の峰と小さな館」の意味と察するが、この名もすでに一幅の絵のようだ。

 オーナーの人脈によるものか、その芸術家たちを含む中国人旅行客の利用も多く、「たいていは短くても2泊してのんびり過ごしていきます」と宿のスタッフ。森林や渓流など自然に包まれた環境では、散策や山歩きのほか、パークゴルフ場やテニスコート、足を伸ばせばスキー場なども控えているが、やはり滞在の一番のお楽しみは温泉のようだ。

 浴室は男女別で、内湯はヒノキ風呂、露天は岩組みのゆったりした風呂が一つずつ。温泉は体に穏やかに作用する食塩泉で、源泉温度は71.6度もあるが、スタッフが絶妙の加減でそろそろと掛け流し、生のままの源泉が堪能できる。内湯につかればヒノキの香りが湯香に混じり、露天に出れば木立が手を伸ばす先に青空が透ける。円卓のような丸石にもたれてまどろめば、時がたつのも忘れそうだ。

 食事は窓の広いレストランで。夕げの食卓にはその日により、牛すき焼きなどの鍋や時季の焼き魚、刺し身盛りなど手作りの気取らぬ日本の味が供される。

 滞在する人を優先して現在のところ日帰り入浴は不可。慌ただしい日々からふと逃れ、一夜の安らぎを得るにも絶好の湯宿である。(旅行ジャーナリスト)

住所 札幌市南区定山渓566の1
電話 011・215・1195
泉質 ナトリウム-塩化物泉
1泊2食料金 大人1万1千円(税込み)から、子供料金もあり
日帰り入浴 不可
交通 札幌中心部から車で国道230号経由、約45分