風格ある岩風呂に源泉が間断なく注がれる

趣味人の別荘のような趣

 夜の静かな温泉で体を緩めた、そのあと―。まるで自宅の冷蔵庫を開ける気楽さで、冷えたスパークリングワインをグラスに注ぎ、キュッ…。「あぁ」。心地よいラウンジの椅子が、今夜はゆっくり休みなさい、と背を抱いてくれるようだ。

 湯の川の温泉街を流れる松倉川のほとりに誕生してもうすぐ1年。黒板塀が囲む和風モダンの3階建て、客室26の小体な宿は、部屋や調度の一つ一つにセンスが光る趣味人の別荘のような趣だ。

 投宿し、旅装を解いて、ラウンジでスタッフとおしゃべり。よろしかったら…と示された一角には、なんとホットコーヒーとソフトクリーム、スパークリングワインが夜10時まで自由に楽しめるよう用意されている。コーヒーは北海道で最も歴史のある函館創業の「美鈴」社のもの、ソフトクリームには函館牛乳をたっぷり使用。何とも粋なドリンクバーだ。

 食事のスタイルも、函館近海ネタのすしを主役にした和のコースと、実に個性的。前菜、焼き物、揚げ物、茶わん蒸しにわん、デザートまですべて手をかけた逸品づくしで、すしの追加は無料という。カウンター席を選べば、職人さんの鮮やかな手さばきと愉快な会話も味わいを倍加させる。

 かなめの温泉は、露天と内湯のすべての湯船に湯の川の熱い源泉を手調整してほとほとと投じ、掛け流す。こっくりとした力強い湯の中に、日々の疲れがみるみると解き放たれていく。

 聞けば、オーナー自身がかつて若い頃に北海道を訪れた旅人だったという。移住を決めたこの地への愛情が詰まった、旅好きの心をくすぐる佳宿である。(旅行ジャーナリスト)

住所 函館市湯川町3の10の3
電話 0138・36・2000
泉質 ナトリウム・カルシウム-塩化物泉
1泊2食料金 2人1室大人1人1万350円から、本文で紹介した料理の場合は1万2960円(いずれも税込み)から。子供料金もあり
日帰り入浴時間 午後5時~10時
日帰り入浴料 タオルとドリンクバー利用込みで大人千円、小学生以下500円、要予約
日帰り入浴定休日 無休
交通 函館市電・湯の川駅から徒歩10分