「質」も「量」も追求する学びに、現場は対応できるだろうか。

 文部科学省は2020年度から順次実施される、小中学校の次期学習指導要領改定案を公表した。

 小学3年から英語の学習が始まり、授業時間は増える。

 これまでアクティブ・ラーニングと言われてきた、討論や意見発表などを通じて答えを探求する「主体的・対話的で深い学び」は、全教科に取り入れられる。

 多様化する社会に対応するためにも、方向性は理解できる。

 ただ、教員の多忙化は深刻だ。

 「質と量」の両立を実現させるには、教員定数の改善や業務の見直しによる負担軽減など、国や教育委員会が積極的に現場の環境整備に取り組む必要がある。

 新指導要領の柱の一つは小学校の英語教育拡大だ。これに伴い、3年から6年の授業時間が年間35こまずつ増える。

 この時間を捻出するため、文科省は「柔軟な時間割の管理」を提唱する。たとえば、朝や給食後に設ける15分程度の短時間学習、夏休みの削減、土曜授業などだ。

 だが、短時間学習は学習が深まりにくいとも言われる。夏休みの削減や土曜授業は、子どもの余裕を奪いかねないとの指摘もある。

 小学校は英語指導に慣れていない教員も多い。中学校の英語授業は、原則英語で実施する。教員自身の英語力向上が欠かせない。

 さらに、現場には道徳教育の教科化やプログラミング教育、主権者学習などの負担ものしかかる。

 部活動の顧問や生徒指導、保護者への対応などで、教員はいまもパンク寸前だ。休み時間も満足にとれない。長時間労働は社会問題にもなっている。

 教員にしわ寄せが及べば、子ども一人一人への目配りも難しくなろう。結果として、「あれも、これも」の授業について行けない子どもが増えないか。

 そうした事態を招かぬよう、国による十分な予算措置と現場への手厚い支援が必要になる。

 「領土」に関しては、北方領土に加え、竹島(島根県)と尖閣諸島(沖縄県)を、初めて「固有の領土」と明記した。

 気になるのは、文科省が主張に隔たりのある中国や韓国の立場について「並べて教えることは想定していない」としていることだ。

 「領土」を取り巻く複雑な歴史や国際的な現状も合わせて教えなければ、深い理解は得られまい。

 重層的に物事をとらえられる冷静な視点を養ってほしい。