6年前のきょう、驚くべき光景がテレビに映し出された。東京電力福島第1原発1号機の建屋爆発である。

 現場は今も放射線量が高いため、内部がどうなっているかも分からず、廃炉に向けた作業は遅々として進んでいない。

 それを尻目に、国は原発再稼働に向け、突き進んでいる。

 すでに12基が原子力規制委員会の審査に合格し、うち3基が稼働している。この1年間に合格したのは7基に上る。

 国が2014年に定めたエネルギー基本計画は「原発依存度を可能な限り低減する」と明記した。なのに、政府や電力会社からは、そうした姿勢がうかがえない。

 再稼働は多くの国民が懸念し、脱原発を求める声が根強い。

 原発を巡る政府や電力業界と国民との溝は広がる一方だ。

■見つからない核燃料

 東電は先月、福島第1原発2号機の格納容器内に、カメラ付きの自走式ロボットを入れた。

 ところが、強い放射線でカメラが壊れるなどし、溶け落ちた核燃料の状況は確認できていない。

 6年も経過してこれだ。炉心溶融という最悪の事故が起きた原発の実態である。

 最も困難とされる核燃料取り出しの方法すら決められず、30~40年かけて行う予定の廃炉は見通しが立っていない。

 深刻なのは、事故の影響で、福島県内外に避難している人が今なお約8万人に上ることだ。

 政府は避難者の帰還を促し、今月31日と来月1日には、原発の北西に位置する浪江町、飯舘村など4町村の一部で、3万2千人を対象に避難指示を解除する。

 だが、4町村の調査で帰還希望者は1~4割台にとどまる。除染が進んだとはいえ、子育て世代を中心に放射線の影響を不安に思う人が多い。

 避難指示区域外から古里を離れた自主避難者は、福島県による無償の住宅提供が今月末で打ち切られる。まるで“兵糧攻め”だ。

 帰還を急いでまちの消滅を食い止めたい地元の意向もあるのだろうが、肝心の住民の気持ちを軽視してはならない。

■40年超えも運転延長

 原発被災地の実態などお構いなしなのか。政府は再稼働を加速させている。

 とりわけ問題なのは、運転開始から40年を迎える老朽原発の関西電力高浜1、2号機、美浜3号機(いずれも福井県)について20年の延長を認めたことだ。

 原子炉等規制法が定める、運転期間を原則40年とするルールの骨抜きにほかならない。

 老朽原発の審査の順番を他の原発より早める優遇もあった。「再稼働ありき」と取られても仕方あるまい。

 政府が「世界で最も厳しい水準」と自賛する新規制基準は、福島の事故を受けてつくられた。

 だが、原子炉の冷却機能が失われ炉心溶融に至った―とされる事故原因も、津波や地震の影響をどう受けたかなど詳細は不明だ。

 これが現在の科学の限界である。「安全神話」はとうに崩壊している。

 本来は原発を含めたエネルギー政策を根本から問い直すのが、政治の役割だ。

 しかし、成長戦略に原発再稼働を掲げる安倍晋三政権は、規制委に審査を丸投げし、新たな安全神話をつくろうとしているようだ。

 野党の民進党も腰が定まらない。「2030年に原発ゼロ」を党方針にしようとしたが、支持労組の反発で先送りを決めた。

 業界やそれを取り巻く研究者らでつくる「原子力ムラ」が社会に根付いていることを示している。

 しかし、海外に目を向ければ、ドイツは福島の事故後、脱原発へかじを切った。台湾もそうだ。それが世界の流れではないか。

 昨年11月に北海道新聞社加盟の日本世論調査会が行った全国調査で、規制委の審査に合格しても「再稼働に反対」は58%で、賛成の35%を大きく上回った。

■原点に戻って議論を

 大手電力は原発なしでは電力が不足したり、電気料金が上がると主張する。しかし、実際は省エネが進んだこともあって、国内の全原発が停止した時期も電力不足は起きなかった。

 福島事故の対策費は当初想定した2倍の計22兆円がかかることが分かり、一部は電気料金や税金にツケ回しされる見通しだ。「原発のコストは安い」とする国の見解も疑わしい。

 もはや、原発を再稼働させる理由は見いだしがたい。

 風力、太陽光など再生可能エネルギーの導入が各地で進んでいる。脱原発への道筋をどう付けるか。6年前の原点に立ち返った議論が重要だ。