発言の撤回と謝罪だけで、国民は納得するだろうか。

 稲田朋美防衛相は、学校法人「森友学園」をめぐる問題の国会審議で、事実と異なる答弁をしていたことを認めた。

 かつて学園の代理人弁護士を務め、民事訴訟に出廷したにもかかわらず、参院予算委員会で「事件を受任したことも裁判所に行ったこともない」と否定していた。

 仮に記憶がなかったとしても、国会で誤った説明をした事実は動かない。答弁の信頼性が疑われては、職責を満足に果たせまい。

 稲田氏は自衛隊の南スーダン国連平和維持活動(PKO)派遣や教育勅語をめぐっても、閣僚としての適性が疑われる発言を重ねてきた。野党は辞任を求めている。

 安倍晋三首相は稲田氏を擁護しているが、任命権者としての責任を認識するべきだ。

 稲田氏はきのうの参院予算委でも、答弁が事実と異なっていたと認める一方「記憶に基づき答弁したもので、虚偽答弁をした認識はない」と主張。辞任を否定した。

 意図的な虚偽ではなかったとしても、国政の焦点となっている問題で自らの関わりを問われ、事実関係を確認せず言い逃れたとすれば、国会軽視の批判を免れない。

 学園側からの献金の有無を問う質疑でも、当初「記憶がない」と答えながら、政治団体の収支報告書を根拠に追及されると一転して認めた。あまりに適格性を欠く。

 先週の参院予算委では教育勅語について「道義国家を目指すべきだという、その精神は取り戻すべきだと考えている」と述べた。

 教育勅語は戦前の軍国主義教育の基礎となり、戦後は衆院が排除、参院が失効確認を決議している。決議の意義に反するような答弁は閣僚として適切と言えない。

 南スーダンPKO派遣をめぐっては、現地の状況を「戦闘」と表現しない理由について「憲法9条上の問題になる言葉は使うべきではない」からだと説明した。

 違憲との疑義を招くことを避けるため、言葉の言い換えで実情を糊塗(こと)したと認めたようなものだ。

 今回の事態を受け与党からも、資質を疑問視する声が出ている。にもかかわらず安倍首相は「説明責任を果たし誠実に職務に当たってほしい」と述べるにとどめた。

 国民の懸念に応えるよりも、閣僚を守ることが優先なのか。

 稲田氏と学園の関係を明らかにする意味でも、籠池泰典(かごいけやすのり)理事長らの証言が不可欠だ。国会は関係者の参考人招致を急いでほしい。