イスラム圏の国々から米国に入国することを禁じる米大統領令に対して、司法が再び「待った」をかけた。

 ハワイ州などの連邦地裁が、大統領令は信仰への差別に当たるとし、執行を差し止める仮処分を命じた。効力は全米に及ぶ。

 トランプ大統領は「前例のない司法の越権行為だ」と強く反発し、連邦最高裁まで争う姿勢を見せている。

 テロ防止が目的だとして、トランプ氏は1月にも同様の大統領令を出した。連邦地裁が差し止めを命じ、控訴審もこれを支持した。

 新大統領令は、入国禁止の対象国からイラクを除くなど、1月の大統領令を一部修正したが、その本質は変わっていない。

 トランプ氏は司法の決定に従うとともに、排外的な政治姿勢を改めるべきである。

 新大統領令はイラン、シリアなど中東・アフリカのイスラム圏6カ国から米国への入国を90日間禁じる。難民はすべての国からの入国を120日間認めない内容だ。

 1月の大統領令と違って、米国の永住権や査証(ビザ)を持つ人を除外した。

 条件を緩和したものの、6カ国の国民は9割以上がイスラム教徒だ。事実上のイスラム教徒排斥であることに変わりはない。

 ハワイ州の連邦地裁も「いくら宗教的に中立だと言っても、客観的な視点に立てば、特定の宗教に不利益を与える意図がある」と指摘した。

 メリーランド州の連邦地裁も同様の理由で差し止めを決定した。

 気になるのは、2度にわたって執行停止を命じられたトランプ氏が強気な姿勢を崩さないことだ。

 トランプ氏は今回の大統領令を「前回のものを水で薄めた」と述べ、1月の大統領令を再度出し直す考えも示唆している。

 トランプ氏は裁判所や裁判官をおとしめる発言を繰り返してきた。司法は政権に従うべきだと言わんばかりだ。

 絶大な力を持つ大統領であっても、司法と議会の監視を受ける三権分立の仕組みを尊重することは、民主主義の基本である。

 入国制限はイスラム教徒の反発を強め、かえってテロの土壌を生むことになりかねない。

 米国でテロにかかわった容疑者の半数以上は米国生まれだったとの報告もある。恣意(しい)的な入国制限がテロ防止策になる根拠は薄い。

 トランプ氏は、司法の決定を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。