核・ミサイル開発を進める北朝鮮と米国の間で緊張が高まっており、日本政府がさまざまなケースを想定した対応を検討している。

 米朝とも「予測不能」といわれる政権同士だ。仮に軍事衝突すれば、北朝鮮の攻撃は米軍基地のある韓国や日本に及び、東アジアの平和と安全は重大な危機にひんする。絶対に避けねばならない。

 そのためには軍事的圧力を強めるトランプ政権に自制を促すとともに、北朝鮮に対する制裁包囲網を強化し対話の場に引き出す外交努力を尽くす。それが日本の役割であることを肝に銘じたい。

 安倍晋三首相はおとといの国会答弁で「北朝鮮はサリンを(ミサイルの)弾頭に付けて着弾させる能力を既に保有している可能性がある」と述べた上で、日米同盟の抑止力強化が重要だと強調した。

 核・ミサイル開発だけではなく非道な化学兵器も断じて認められないのは言うまでもない。

 だが、北朝鮮の保有疑惑自体は以前から指摘されている。脅威を強調する材料として持ち出してみせたとの印象も否めない。

 緊張をあおるのではなく、平和的解決を目指す決意こそ首相はより強く打ち出してほしい。

 そうした言葉が全くないわけではないが、現実はトランプ大統領の強硬策を評価し、同盟強化に一層前のめりな姿が鮮明だ。

 トランプ氏は朝鮮半島付近に向かわせている原子力空母などの艦隊を「無敵艦隊」と呼んだ。

 過激派組織「イスラム国」(IS)打倒のため強大な破壊力を持つ大規模爆風爆弾(MOAB)をアフガニスタンで使用したのも、北朝鮮に警告を発する狙いがあるとの見方が出ている。

 だが、外交・軍事の経験に乏しいトランプ氏が単純な力の誇示で北朝鮮を屈服させられると考えているとすれば危うい。互いの挑発や威嚇が緊張を高め、武力衝突につながりかねない。

 集団的自衛権の行使が可能になった安全保障法制の下で首相は日米同盟の「絆」を誇り、2月の首脳会談で日本がより大きな役割、責任を果たすと公約した。

 いったん有事となれば、米国からさまざまな軍事的支援要求があるのは間違いない。自衛隊が成算なき米軍の武力行使に巻き込まれ、おびただしい犠牲者を出すシナリオが現実味を帯びる。

 そうならないようトランプ氏にいつでもブレーキをかけられるようにする。それが、日米首脳の本当の絆だろう。