トルコで大統領に権力を集中させる憲法改正が行われることになった。改憲の是非を問う国民投票の結果、賛成がわずかの差で反対を上回った。

 2019年から議院内閣制をやめ、大統領制に移行する。首相がいなくなり、大統領の国会や司法への影響力が増す。三権分立の形骸化を懸念せざるをえない。

 次の大統領選で現職のエルドアン氏が当選すれば、29年まで最高権力者の地位にとどまれる。

 エルドアン氏の強権的な政治手法は国内だけでなく、欧州などからも「独裁的だ」などと批判されている。

 国民への抑圧が強まり、これ以上、自由が制限されるようなことがあってはならない。

 トルコは人口の99%がイスラム教徒だが、1923年の建国以来、政教分離を貫いてきた。

 02年にイスラム色の強い公正発展党(AKP)が政権を取り、03年にエルドアン氏が首相になると、イスラム教に配慮した政策を打ち出すようになった。

 党の内規で首相続投が不可能になると、大統領にくら替え当選し、権力を掌握し続けた。

 改憲によって「実権型大統領」となることは、エルドアン氏の悲願だったといえる。

 国民投票は、国民が相次ぐテロを目の前にし「強い指導者」を望んだ結果でもあろう。

 だが、ほぼ半数が改憲案に反対票を投じた。野党や欧州の国際機関からは投票結果などに疑義が示されている。

 この状況で強権を振るえば、国家の分断、混乱は避けられまい。エルドアン氏は、投票結果が国民からの白紙委任状ではないことを肝に銘じてほしい。

 トルコ政府は昨年のクーデター未遂で、事件に関与したとして10万人以上の公務員を解雇・停職処分にし、記者や人権活動家4万人以上を逮捕、拘束した。非常事態宣言はいまも出されたままだ。

 人権や言論の自由を侵害しているとの批判は絶えない。エルドアン氏はこうした声に真摯(しんし)に耳を傾ける必要がある。

 トルコには隣国シリアの難民約300万人が身を寄せる。欧州にとって難民流入の「防波堤」となっている。過激派組織「イスラム国」(IS)への対応でもトルコの協力は不可欠である。

 アジアと欧州の懸け橋であるトルコの果たす役割は大きい。強権に頼ることなく、国内を安定させる道を探るべきだ。