東京電力福島第1原発事故で福島県から県内外に避難した小中高校生らに対するいじめが、199件に上ることが分かった。

 文部科学省が初めて調査した。東日本大震災や原発事故に関連するいじめは13件だった。

 だが、実態を正確に反映しているのだろうか。

 2016年度が129件なのに対し、15年度以前は70件にとどまっている。避難当初に学校側が把握しきれないいじめも多かった可能性なども考えれば、表面化したのは氷山の一角ともいえよう。

 国策で進めた原発の事故さえなければ、こうした苦しみを味わわずに済んだかもしれない。国は地方自治体と協力し、いじめ防止に真摯(しんし)に取り組む責任がある。

 調査では「放射能がうつるから来ないで」「おまえらのせいで原発が爆発したんだ」など、理不尽な中傷を受けたケースもあった。

 松野博一文科相は「背景には放射線や避難を続ける人たちへの理解不足がある」と会見で語った。

 確かにその通りではあろう。

 しかし、その「理解不足」は子どもたちだけの責任なのか。

 放射線被害に対する誤解や賠償金へのやっかみなど、大人たちの心ない言動や偏見がぎすぎすした社会の空気を作り出し、子どもたちに影響を与えていないか。

 なにしろ肝心の政府内から「理解不足」としか思えない発言が飛び出している。今村雅弘復興相は、古里に戻れない自主避難者を「本人の判断」「裁判でも何でもやればいい」などと突き放した。

 こうした思いやりに欠ける発言が、社会の無理解を助長していると言っても過言ではないだろう。大人が率先して避難者に寄り添う姿勢を示し、子どもたちに言葉と行動で伝えなければなるまい。

 いじめに対する認識についても耳を疑う発言があった。

 松野文科相は、いじめられた子どもたちに対し「先生や保護者に相談してほしい」と呼び掛けた。

 だが、原発避難いじめに限らず、いじめを受けていると口にすることがどれだけ大変か分かっているのか。口にできないからこそ、いじめが深刻化するのだ。

 そもそも、転校生はいじめの対象になりやすい。それだけに、学校や周囲の大人たちが、ちょっとした異変も見逃さないよう注意深く対応するのが当然だ。

 いまもいじめで苦しむ子どもたちはたくさんいるはずだ。学校や教育委員会はそれを忘れず、日々子どもたちと向き合ってほしい。