米司法省が、独立性の高い特別検察官にモラー元連邦捜査局(FBI)長官を任命した。昨年の米大統領選などでのトランプ大統領とロシアの不透明な関係を調べるのが目的だ。

 トランプ氏が機密情報を漏らしたり、FBIに捜査打ち切りを働きかけたりした、と米メディアは次々と新たな疑惑を伝えている。だがこれらについてのトランプ氏側の説明は説得力に欠ける。

 今月9日にはFBIのコミー長官も解任した。露骨な疑惑隠しと受け止められても仕方あるまい。

 捜査の結果、トランプ氏による「司法妨害」が認定されれば、弾劾に発展する可能性もある。徹底した真相解明を求めたい。

 トランプ氏は特別検察官について「米国史上最大の魔女狩りだ」と反発しているが、司法省は最高権力者に忖度(そんたく)することなく、国民の要望に応えようとしている。その姿勢を評価したい。

 トランプ氏は2月、コミー氏とホワイトハウスの執務室で向き合い、「彼はいい男だ。見逃してほしい」と語ったという。

 「彼」とは側近だったフリン前大統領補佐官である。政権発足前にロシア当局者と対ロ制裁解除に関して協議していたとして、その前日に更迭されたばかりだった。

 事実とすればトランプ氏は、フリン氏の捜査打ち切りを促したことになる。信じがたいことだ。

 今月9日、そのコミー氏を解任したのもあまりに唐突だった。主な理由は、昨年7月のクリントン元国務長官の私用メール問題への対応のまずさだという。

 だがそうであるならば、なぜ大統領就任時に解任しなかったのか。捜査の拡大を恐れたのではないか、との疑念が拭えない。

 実際、トランプ氏はコミー氏に3度にわたって、自身がFBIの捜査対象になっていないか、直接尋ねたという。

 トランプ氏はコミー氏を解任後、ツイッターで「報道機関へ情報を漏らす前に、われわれの会話の録音テープがないことを願うべきだ」と、口封じともとれる投稿をしたのも常軌を逸している。

 もともとの疑惑は、米大統領選でロシアが民主党陣営に仕掛けたとされるサイバー攻撃に、トランプ陣営が関与したのではないかというものだ。

 政権の正統性を揺るがしかねない疑惑である。火種がくすぶったままでは、今後の政権運営にも影響しよう。トランプ氏には捜査への全面的な協力を求めたい。