「共謀罪」の成立要件を変更しテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案の参院審議を巡り、与野党の攻防が激化した。

 民進、共産両党はきのう、閣僚としての資質に欠けるとして金田勝年法相に対する問責決議案を参院に提出した。

 与党はきょうの参院本会議で問責案を否決し、週内に参院法務委員会での法案採決と成立に持ち込む構えだ。

 だが市民生活に捜査当局の監視の目が入り込み、内心の自由を侵されかねないとの法案への懸念や疑問点は、むしろ膨らんでいる。

 成立させたら重大な禍根を残すのは必至だ。与党側がこのまま採決ありきで突き進むことは許されない。法案は廃案が筋である。

 金田氏は参院審議で「組織的犯罪集団の構成員でないと犯罪が成立しないわけではない」と述べ、「関わりのある周辺者」も処罰対象になるとの見解を示した。

 捜査当局の拡大解釈の余地をさらに広げるような答弁である。

 人権侵害の危険性が指摘されるからこそ、処罰されるかどうかの線引きを国会答弁で明確にするのが閣僚として果たすべき責務だろう。議論を深めるほど曖昧な点が増えるのでは論外ではないか。

 金田氏は依然、答弁を刑事局長に丸投げする場面が目立つ。法案の内容を理解できていないとの野党側の問責理由は説得力を持つ。

 問責案は採決を強行しないとの与党側の確約が得られなかったとして、野党側の質疑時間を残した段階で提出され、審議は打ち切られた。時機として国民に分かりにくい面があったことは否めない。

 だからといって、問責案提出を口実に与党が採決を正当化することはできない。

 国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の立法ガイドを執筆した米国の教授は複数のメディアの取材に対し、条約は金銭利益目的の国際犯罪が対象だとし、「テロ対策が目的ではない」と明言した。

 テロ対策のために条約締結が必要で、それには法改正が前提だとしてきた政府の主張が根底から揺らいでいる。

 北海道新聞社が5月下旬に行った世論調査では共謀罪反対が59%と前月比14ポイント増加した。問題点が浸透してきたことの表れだろう。

 政府・与党には国会会期を大幅延長し、世論の理解が得られるまで徹底審議しようという姿勢すらなく、幕引きを急いでいるように映る。これでは、言論の府の果たすべき使命を放棄したも同然だ。