国民の声も議論の必要性も無視し、数の力だけを頼りにした、極めて横暴な国会運営である。

 「共謀罪」の構成要件を変更してテロ等準備罪を新設する組織犯罪処罰法改正案について、与党はきのう参院で、委員会採決を素通りして「中間報告」として本会議に持ち込む暴挙に出た。

 自民党の松山政司参院国対委員長は「審議時間を十分積み上げてきた」と説明する。

 しかし参院での審議は20時間に満たず、衆院法務委員会の約30時間にも遠く及ばない。

 この法案はテロ対策を口実に捜査当局の権限を広げ、国民への監視強化を招く恐れが指摘される。審議を通じてその懸念はむしろ深まっている。

 与党の本音は、学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設をめぐって国民の疑念が強まる中、一日でも早く国会を閉じ、野党の追及をかわしたい一点にあるのだろう。

 安倍晋三政権はこれまで、選挙で争点の中心に据えなかった特定秘密保護法、安全保障法制をいずれも、数の力で強引に押し通してきた。

 今回も同じ手法である。政治の信頼を大きく損なった責任を、強く感じるべきである。

 松山氏は中間報告を提案した理由について、野党が金田勝年法相に対する問責決議案を提出したことで「審議を続ける気はないと判断した」と主張した。

 しかし担当閣僚が、捜査対象の線引きなど法案の根幹に関わる質問にさえ満足に答えられないのである。野党が厳しく叱責(しっせき)し、さらなる審議を求めるのは当然だ。

 それを「続ける気はない」として、採決の理由とした与党の論理は逆転している。

 そもそも、恣意(しい)的な運用を許す法案自体の欠陥は明らかであり、審議を重ねれば重ねるほど、新たな疑問が生じている。

 にもかかわらず自民党が採決を急いだ背景には、加計問題に早期に幕を引き、23日告示の東京都議選への影響を避ける思惑がある。

 目先の選挙のために、国民の内心の自由を脅かす法案を拙速に成立させる、本末転倒の姿勢だ。

 加計問題では、学園理事長と首相との親密な関係が国家戦略特区の選定に影響を与え、行政の公平性をゆがめた疑いが持たれる。

 首相は「何か指摘を受ければ真摯(しんし)に説明責任を果たしていく」と明言したはずだ。にもかかわらず究明を回避するのなら、国民の疑念は深まるばかりではないか。