「共謀罪」の構成要件を変更しテロ等準備罪を新設する改正組織犯罪処罰法は、与党が参院の委員会採決を省略する中間報告という強硬手段に出て、徹夜国会の末に可決、成立した。

 多数決で結論を出すまでに熟議を重ね、少数意見にも耳を傾け、できる限り合意形成に努める―。国会は、その過程を何より大切にする場でなければならない。

 野党の後ろにも、主権者である国民の存在があるからだ。

 ましてや、憲法が保障する基本的人権の重大な侵害につながりかねないと批判された「共謀罪」法である。与党はそれを、議論を封じる奇策で押し切った。立法府の本分を捨てたに等しい。

 中間報告は主に、野党の委員長の下で審議が滞ったとき、与党が採決を早めるために使ってきた。それでも例外中の例外の手段だ。

 現在の参院法務委員長は与党・公明党の秋野公造氏である。本来なら中間報告などあり得まい。

 委員会の審議時間も衆院の3分の2にも達しておらず、疑問点も次々と指摘され、採決の環境にはほど遠い状況だった。

 なのに与党が強行したのは、学校法人加計(かけ)学園問題を抱え、国会を早々に閉じたいという安倍晋三首相の意向を、参院自民党が「忖度(そんたく)」したためとの見方がある。

 国権の最高機関の役割を国会が自ら否定したことにならないか。

 本来なら自民党のブレーキ役になるべき公明党にとっても、中間報告は渡りに船だったようだ。

 委員会で採決すれば秋野氏が野党議員に取り囲まれるなど混乱し、重視する東京都議選にマイナスイメージになりかねないと懸念したとされる。国民不在の選挙優先姿勢だと言わざるを得ない。

 野党側にも注文しておきたい。

 民進、共産両党は参院法務委の審議途中で金田勝年法相の問責決議案を参院に提出した。これが、「野党が審議拒否した」と与党の中間報告の口実に使われた。

 野党が不信任や問責などで審議引き延ばしを図る日程闘争は、与党の「数」に対抗するやむを得ない面もあるとはいえ、「会期」にとらわれすぎてはいまいか。

 徹底的な論戦で法案の問題点を顕在化させ、政府・与党を論破する。国会外の市民とも連携する。「共謀罪」法に限らず、これが正攻法だろう。そうでなければ、いつまでも数の力をはね返せない。

 安倍1強政治に立ち向かう国会戦術の在り方について、野党間で議論を尽くしてほしい。