ドイツの民間学術団体が、保管しているアイヌ民族の遺骨の1体が墓からの盗掘だったと判断し、近く日本政府を通じて返還する。

 オーストラリア政府も、自国内の2博物館に保管されているアイヌ民族の遺骨3体を返す意向を日本側に伝えた。

 昨年夏以降、海外に渡ったアイヌ民族の遺骨の存在が次々と分かり、返還の動きが続いている。

 アイヌ民族の遺骨を巡っては、国内の大学などで保管状況などの調査が進められている。

 一方、国外流出の遺骨は8カ国に及ぶとの指摘もあるものの、全容はよく分かっていない。

 政府はまず、海外に渡った遺骨の把握を急ぐ必要がある。

 その上で、持ち出された経緯を詳細に調べ、出身地域や子孫などが特定できるなら、元の場所に戻す努力をするべきだ。

 先住民族の遺骨研究には、人類学上の観点の半面、人種差別的な収集という負の側面がつきまとってきた。

 しかし、2007年に採択された「先住民族の権利に関する国連宣言」に「遺骨の返還」を求める権利が明記され、その前後から流れが大きく変わった。

 例えば、欧州に流出したオーストラリアの先住民族アボリジニの遺骨である。

 英国は約10年前、エディンバラ大学が保管していた約2千体のうち700体をオーストラリアに返還。ドイツも13~14年に大学主体で約50体を返した。

 気になるのは、国外から入手した遺骨に関する、両国と対照的な日本の動きの鈍さだ。

 北大では1995年、サハリンのウイルタ民族などの遺骨6体が段ボール詰めで長年放置されていたことが分かり、4体がロシアの民族側などに返還された。

 だが、後が続いていない。

 オーストラリア政府から返還されるアイヌ民族の遺骨3体については、アボリジニの遺骨との交換であり、3体が東大に送られた記録が同国側に残されている。

 なのに、東大側はノーコメントを通している。閉鎖的な対応は世界の潮流に逆行するのでないか。

 このままでは、他国にアイヌ民族の遺骨返還を求めても、勝手な言い分ととられかねない。

 実は、国内で保管されている外国由来の遺骨は、その実情すら分かっていない。

 政府や関係する研究機関には、徹底した調査と返還をめぐる関係国との真摯(しんし)な協議が求められる。