フランス国民議会(下院)の総選挙で、5月に就任したばかりのマクロン大統領率いる新党「共和国前進(REM)」のグループが6割の議席を獲得し、圧勝した。

 形の上では、マクロン氏が議会に確固とした足場を築いたといえる。今後はそれを基盤に、欧州連合(EU)の統合強化などの公約を進めていくことになる。

 気になるのは、投票率が42%台と史上最低水準に落ち込んだことである。

 国民は新党を積極的に支持したというよりも、既成政党に任せられない一方、極右にも警戒感を抱く中、消極的な選択をせざるを得なかったとみることもできよう。

 投資銀行出身で、新自由主義的な政策を掲げるマクロン氏に不信感を持つ国民も少なくない。

 英国のEU離脱を控え、欧州でフランスの果たす役割はますます大きくなる。欧州政治を安定させるためにも、マクロン氏は国内でより幅広く、積極的な支持を得る必要がある。

 マクロン氏はもともと議会に足場がなく、総選挙でも当初は新党の苦戦が予想されていた。

 そこで、左右両党の政治家を政権に迎え入れるとともに、米ロ首脳との会談もそつなくこなし、大統領として無難に滑り出した。それが、有権者に一定程度評価されたのだろう。

 半面、社会党系は8割以上、中道・右派連合も約3割の議席を失った。

 新党の躍進は、高い失業率や貧富の格差、テロ対策に有効な処方箋を見いだせない既成政治への異議申し立てともとれる。

 それだけに、マクロン氏が政権基盤を維持できるかどうかは、そうした難題に応えられるかにかかってくる。

 新党の当選議員の多くが政治経験がほとんどない「新人」だ。不慣れな政権が対応を誤れば、一気に失望感が広がる恐れがある。

 マクロン氏の公約である企業の労働時間の延長、公務員の大幅削減など痛みを伴う経済改革にも、労働組合などの抵抗が必至だ。

 マクロン氏にとって、これからがまさに勝負どころである。

 「右でも左でもない」との言葉通り、左右の分断を越えて、指導力を発揮しなければならない。

 マクロン氏は今後、ドイツのメルケル首相と連携を強めていく構えだ。EUの統合を強化して「自国第一主義」や排外主義を押しとどめる力となれるか。マクロン氏は、その重責を担う。