わずか7日間で終わった昭和64年(1989年)に、少女誘拐殺害事件が起こった。関係者が「ロクヨン」と呼んだ事件は、未解決のまま過ぎていく。後にこの事件を模倣した犯行があり、捜査陣が当時の真相に迫ろうとする。昨年、大ヒットした映画「64―ロクヨン―」である▼フィクションながら味わい深いのは、改元時期を舞台にしたからなのか。昭和天皇の逝去翌日に元号が平成に変わり、事件も風化していく。過度の自粛ムードに包まれた当時の雰囲気が伝わってくる▼映画ファンとして複雑なのは、ロクヨンのような設定が今後は難しくなるかもしれないことである。政府は、皇太子さまが新天皇に即位する日を2019年1月1日とし、同時に元号を改める方向で検討に入った▼1年の途中で元号が変わると国民生活への影響が大きいためだという。前もって新元号を発表し、カレンダーや手帳作りへの支障も少なくする配慮もする▼それでも割り切れなさが残る。検討の順番があべこべに映るからだ。退位のあり方について有識者会議が議論している最中なのに、なぜ即位日だけ先行浮上するのか。その時期までに退位を促しているようにも勘繰れる▼天皇陛下は、昨年の「お気持ち」で「人々の声に耳を傾け、思いに寄り添うことも大切に考えてきました」と述べている。丁寧かつガラス張りの議論でなければ陛下の心情にも背く。2017・1・12