本州のある企業で社長に社訓を表す文字を聞くと「涎(よだれ)」と答えた。風変わりだと思っていたら、「商いは牛の涎」から取ったと説明してくれた▼牛の涎が細く長く垂れるようにのんびり、あせらずに辛抱せよという教えだ。江戸時代の浮世草紙「日本新永代蔵」でもこの言葉の後に「万事せかぬが大器なり」とある。企業永続の心構えは今も昔も変わらないようだ▼帝国データバンクによれば、今年中に創業100年を迎える道内の企業・法人は44に上る。文字通り牛の涎と縁が深い「町村農場」も含まれる。いずれも厳しい気候や本州の大消費地と離れた不利な条件にさらされながら、長い時間をかけて克服した老舗の足腰の強さがうかがえる▼むろん、老舗の看板が企業の保険になる時代ではない。東芝が昨年末で負債が資産を上回る債務超過になった。最大要因は原子力事業への過度の傾斜と言われる▼見込み違いを福島第1原発事故のせいにしているが、それだけではない。10年前の中越沖地震の影響をはじめ、原発に対していくつかの「警告灯」が点滅していたはず。経営陣は頭の中がばら色の夢に占領されて黄色に気付かなかったか▼帝国データバンクの別な調査を見ると、社是や社訓に老舗企業の色が出ているのが分かる。「投機・相場には手を出すな」「腹八分目商法」。ズバリ「大きくするな」もある。右肩上がりが全てではない。2017・2・17